M&Aの仲介手数料の相場|安く抑えるための3つのポイントと計算方法を解説
M&Aを検討している経営者にとって、仲介会社の手数料は重要な検討要素の1つです。
「M&Aの仲介手数料はいくらかかるのか」 「できるだけ費用を抑えたいけど、どうすれば良いのか」そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、M&A仲介手数料の相場をはじめ、 手数料の内訳や費用を抑えるためのポイントを解説します。
M&A仲介手数料に関する不安を解消し、 適切なパートナー選びを実現しましょう。
M&Aでかかる仲介手数料の相場
M&A仲介手数料は取引規模や仲介会社各社の方針により変動します。
一般的には、取引金額の1%〜5%程度が成功報酬として設定されるケースが多く、加えて各種手数料が発生します。
多くの仲介会社では成功報酬に「レーマン方式」を採用しており、取引金額を段階別に分けて、異なる手数料率を適用しています。総手数料は数百万円から数億円の範囲となり、非常に幅広いです。大型取引になるほど手数料は増加しますが、実質的な手数料率は低下する傾向があります。
近年では成功報酬型の料金体系を採用する仲介会社が増加しており、初期費用を抑えた取引が可能です。
M&A仲介会社とは?FAとの違いや選び方・メリットを徹底解説
M&Aでかかる仲介手数料の内訳と費用相場
M&A仲介手数料は複数の要素で構成されており、取引の進行段階に応じて費用が発生します。
主要な仲介手数料の項目は以下の通りです。
- 相談料
- 着手金
- 中間報酬
- デューデリジェンス費用
- 成功報酬
- 月額固定料
手数料項目 | 相場 | 支払いタイミング | 備考 |
相談料 | 無料~1万円 | 初回相談時 | 多くの業者で無料 |
着手金 | 50万円~200万円 | 契約締結時 | 無料の業者も増加 |
中間報酬 | 50万円~200万円 | 基本合意締結時 | 成功報酬の10~20% |
デューデリジェンス | 無料~200万円 | 調査実施時 | 調査範囲により変動 |
成功報酬 | 取引額の1~5% | 取引完了時 | レーマン方式が一般的 |
月額固定料 | 20万円~100万円 | 毎月 | 設定期間は6~12ヶ月 |
具体的にみていきましょう。
相談料の相場
M&A仲介会社に正式な依頼をする前の相談にかかる費用です。
初回相談は無料としている仲介会社が多いですが、2回目以降や、より専門的な相談には費用が発生する場合があります。相談料は無料〜1万円程度が相場です。
相談料は、M&Aの初期段階で、仲介会社の専門家からM&Aに関する一般的な情報やアドバイスを受けるために支払う費用です。
自社の状況やニーズを伝え、M&Aの可能性や注意点について意見を聞くことができます。
着手金の相場
着手金はM&A仲介会社と提携仲介契約を結ぶ際に支払う費用です。
M&Aの準備段階における調査費用や、M&A戦略の策定費用に充当されます。
具体的には、企業の概要調査、企業価値評価、買い手・売り手候補の選定など、M&Aを成功させるための初期活動に必要な費用です。
着手金の相場は50万円~200万円程度ですが、M&A仲介会社によっては着手金を設定していない場合もあります。
中間報酬の相場
中間報酬はM&Aの基本合意契約締結時に発生する費用です。
基本合意契約とは、譲渡価格やスケジュールなど、M&Aの基本的な条件について、売り手と買い手が合意したことを示す契約です。
M&Aのプロセスが一定の段階に進んだことに対する成功報酬として発生します。
中間報酬の相場は10万円~200万円程度、または成功報酬の10〜20%になることが一般的です。
中間報酬は、最終的にM&Aの契約が成立しなかった場合でも返金されないので注意が必要です。
デューデリジェンスの相場
デューデリジェンスとは、買い手候補が売り手企業の財務、法務、税務の状況を把握し、企業価値やリスクを明確にするプロセスです。
デューデリジェンスにかかる費用は、買い手側の負担が一般的ですが、M&A仲介会社がサポートする場合、別途手数料が発生するケースがあります。
費用相場は10~200万円程度ですが、基本的には着手金や成功報酬に含まれており、デューデリジェンス費用だけを別途請求するケースは多くありません。
デューデリジェンスの品質は取引の成功にも直結するため、費用対効果を踏まえ慎重に検討しましょう。
M&Aの企業価値評価とは?売り手・買い手の視点でわかりやすく解説
成功報酬の相場
成功報酬とはM&Aが成立した際に、M&A仲介会社に支払う報酬です。
成功報酬は、M&Aの取引金額に一定の料率を掛けて算出されることが一般的です。
料率は、取引金額に応じて変動する「レーマン方式」がよく用いられます。成功報酬の相場は、取引金額の1〜5%程度です。
成功報酬は、M&A仲介会社の主な収入源であり、M&Aの成功に対するインセンティブです。
また、仲介会社の中には取引規模に関わらず、最低金額を設定しているケースもあります。
月額固定料の相場
M&A仲介会社によっては、月額固定制でサービスを提供するケースもあります。
月額固定料は、M&Aの準備期間中からM&Aの実行が完了するまで、毎月定額で支払う費用です。費用相場は月額30万円~200万円程度です。
M&Aの期間が長期化する場合や、M&Aの難易度が高い場合に、月額固定料が設定される傾向にあります。
中小企業庁「M&Aガイドライン」と手数料の開示について
中小企業庁はM&A市場の健全な発展を目指し、「中小M&Aガイドライン」を策定・改訂しています。
本章では、中小企業庁による「M&Aガイドライン」の内容と手数料開示に関する最新情報について解説します。
- 中小企業庁による「M&Aガイドライン」の改訂
- M&A支援機関登録制度と手数料体系の開示
具体的にみていきましょう。
中小企業庁による「M&Aガイドライン」の改訂
中小企業庁は、中小M&Aにおける健全な環境整備と、M&A支援機関における支援の質向上を図るため、「中小M&Aガイドライン」を2024年に改訂しました。
当ガイドラインは、中小M&Aのプロセスにおける留意点や、M&A支援機関に求められる行動などをまとめたものです。
2024年の改訂では主に以下の6点が改訂されています。
- 手数料体系と業務内容の透明化
- 適切な広告・営業活動の実施
- 利益相反行為の防止強化
- 最終契約後のリスク管理
- 経営者保証の適切な処理
- 企業名開示とテール・専任条項の明確化
M&Aを検討している中小企業の経営者は当ガイドラインを参考に、M&Aのプロセスを適切に進める必要があります。
【参照】経済産業省|「中小M&Aガイドライン」を改訂しました
M&A支援機関登録制度と手数料体系の開示
中小企業庁では「M&A支援機関登録制度」を設けています。
M&A支援機関登録制度は、一定基準を満たすM&Aの仲介会社やファイナンシャルアドバイザーが登録できる制度です。
主に中小企業が安心してM&Aに取り組むための基盤構築を目的としています。
2024年のガイドライン改訂では、M&A支援機関に登録されている企業の手数料体系の公表が開始されました。
公表された手数料体系は、中小企業庁の運営する「登録支援機関データベース」にて確認が可能です。
ただし公表されているのは、標準的な手数料体系として報告されたものであり、実際の案件によって金額がことなる場合があるため注意が必要です。
公表されている手数料体系を参考にして、自社のニーズや予算にあった仲介会社を選択しましょう。
M&Aの仲介手数料は誰が支払う
M&Aの形態 | 手数料の負担者 |
仲介(両手取引) | 買い手と売り手の双方 |
FA(片手取引) | FA契約を結んだ側(売り手または買い手どちらか一方) |
M&Aの仲介手数料は、原則として、M&Aの仲介を依頼した者が支払います。
M&Aの仲介には、売り手と買い手の間に入ってM&Aをサポートする「仲介」と、売り手または買い手のどちらか一方をサポートする「FA(ファイナンシャルアドバイザー)」の2つの形態があります。
仲介(両手取引)の場合は買い手と売り手の双方が仲介手数料を支払うケースが一般的です。
FA(片手取引)の場合は、FA契約を結んだ側が手数料を支払います。例えば、売り手側がFAと契約した場合、買い手は仲介手数料を支払う必要はありません。
仲介会社によって「仲介」も「FA」も両方対応しているところもあれば、どちらか一方しか対応していないところもあります。
契約前には仲介会社のサービス内容を把握してから契約に進みましょう。
M&Aの仲介手数料が高くなる理由
M&Aの仲介手数料が高い理由は人件費にあります。
M&A仲介業務は高度な知識と経験を要求され、有資格者や経験豊富な人材の確保が不可欠です。
公認会計士・税理士・弁護士などの士業資格者や、金融機関出身者など高い専門性を持つ人材が求められるため、人件費が高額になります。
また、一つの案件に複数の担当者が関与する点や、契約期間も平均6カ月から1年程度と長期化する点も、高額費用の要因です。
契約前には、仲介会社のWebサイトのチェックや、直接案件相談を行うなどして料金体系を把握しましょう。
また、M&A支援機関に登録済みの企業であれば、手数料体系をWeb上で確認できるため、複数のサービスを比較・検討できます。
M&Aの仲介手数料を抑えるコツ
M&A仲介手数料は、多数の専門知識を必要とし、費用が高額になりがちですが、以下3つのコツを知っておくことで、費用を抑えることが可能です。
- 複数のM&A業者から相見積もりを取る
- M&A関連の補助金・助成金を活用する
- 成功報酬の算定基準に「株価レーマン方式」を適用している業者を選ぶ
具体的に解説します。
M&Aに適した株価算定方法とは|非上場・中小企業の費用と算定手順を解説
複数のM&A仲介会社から相見積もりを取る
M&A仲介手数料は、仲介会社によって大きく異なります。
そのため、複数の仲介会社から見積もりを取り、比較検討しましょう。
見積もりを比較する際には、手数料だけでなく、仲介会社の実績や得意分野、サポート体制なども考慮します。
見積もりには、相談料として1万円前後の費用が発生するケースがありますが、近年は無料相談を実施する仲介会社も増加しています。
複数の業者を比較し、サービス・料金ともに自社ニーズに合った最適な仲介会社を見つけましょう。
M&A関連の補助金・助成金を活用する
M&Aの仲介手数料を効率的に抑制する方法として、事業承継・M&A補助金の活用が有効です。
補助金の専門家活用枠では、M&A仲介会社への手数料に対して補助率2/3または1/2、最大800万円までの支援が受けられます。
申請は電子申請のみとなっており、事前のGビズIDプライムアカウント取得が必要です。
補助金の詳細な申請条件や手続きについては、中小企業庁の公式サイトで確認しましょう。
補助金や助成金の制度を効果的に利用できれば、M&Aプロセス全体のコスト効率化を実現できます。
【参照】中小企業庁|中小企業生産性革命推進事業「事業承継・M&A補助金」(十一次公募)の公募要領を公表します
成功報酬の算定基準に「株価レーマン方式」を適用している業者を選ぶ
M&Aの成功報酬は、レーマン方式と呼ばれる計算方法での算出が一般的です。
レーマン方式には、いくつかの種類がありますが、その中でも「株価レーマン方式」を適用している仲介会社を選ぶことが、費用を抑える上で有効です。
株価レーマン方式は、実際の株式の取引額をそのまま報酬基準とするため、透明性が高く、適正な報酬額を算出しやすいメリットがあります。
算定方式の違いによって、手数料額に大きく差が出るケースもあるため、契約前の詳細確認が重要です。
成功報酬の料金体系「レーマン方式」とは
M&Aの成功報酬を算出する方法として、多くのM&A仲介会社で採用されているのが「レーマン方式」です。
レーマン方式は、M&Aの取引金額に応じて段階的に手数料率が下がる仕組みで、透明性が高く、事前に手数料を見積もりしやすい特徴があります。
本章では以下の項目に沿ってレーマン方式について詳しく解説します。
- レーマン方式の計算方法
- レーマン方式のメリット
- レーマン方式のデメリット
具体的にみていきましょう。
レーマン方式の計算方法
レーマン方式では、一般的に以下の表のような料率が用いられます。
譲渡金額 | 手数料率 |
5億円以下 | 5% |
5億円超~10億円以下 | 4% |
10億円超~50億円以下 | 3% |
50億円超~100億円以下 | 2% |
100億円超 | 1% |
たとえば、譲渡金額が7億円の場合、以下のように計算します。
- 5億円以下の部分:5億円 × 5% = 2,500万円
- 5億円超~7億円以下の部分:2億円 × 4% = 800万円
- 合計:2,500万円 + 800万円 = 3,300万円
この場合のM&A仲介手数料は3,300万円です。
ただし、レーマン方式はあくまで一例であり、仲介会社によって料率や計算方法が異なる場合があります。
契約前に必ず確認するようにしましょう。
レーマン方式のメリット
レーマン方式の最大のメリットは手数料算定の透明性です。
事前に正確な手数料を計算でき、取引金額が確定した段階で成功報酬額も明確です。
また、高額取引ほど実質的な手数料率が低下する段階的な減額方式により、大型取引での手数料の軽減効果があります。
業界標準的な算定方法であるため、複数業者間での比較も容易です。
標準化された算定方法により、不当に高額な手数料請求のリスクを軽減できる点も重要なメリットです。
レーマン方式のデメリット
レーマン方式のデメリットは小規模取引での手数料負担が相対的に重くなることです。
特に5億円以下の取引では5%の手数料率が適用されるため、売却価格に対する手数料比率が高くなります。
また、最低成功報酬額の設定により、極小規模取引では算定結果よりも高額な手数料が発生するケースがあります。
レーマン方式の料率は仲介会社によって微調整される場合もあるため、詳細確認が必要です。
取引規模により、固定料金制やその他の算定方式の方が有利となる可能性もあります。
M&A仲介手数料の相場を知って適切な業者選びを
M&Aを進める際、仲介手数料は重要な選定基準の1つです。
手数料は複数の項目で構成されており、対応案件により異なりますが、非常に高額になるケースも珍しくありません。
費用を抑え適切な企業とM&Aを成功させるためには、複数業者に相談し、補助金等を使いながら、仲介会社を選定する必要があります。
M&Aは企業にとってとても大きな決断です。
仲介手数料の仕組みや費用相場をきちんと把握して、自社に合った信頼できる仲介会社を見つけましょう。