M&A基礎知識

M&Aで会社を売却したら社長はどうなる?引退後の人生・お金・保証まで徹底解説

M&Aによる会社売却(事業承継)は、社長にとって人生そのものを左右する大きな決断です。経営の重責から解放され、自由な時間を楽しんだり、新たな挑戦に踏み出したりできる一方で、M&A後の生き方や、従業員・取引先の行方に不安を感じる人も少なくありません。

社長にとって、M&Aによって長年注力してきた会社を手放すことは、単なる事業の区切りではなく、自身のアイデンティティにも関わります。そのため、M&Aによって何が変わり、何を得られるのかを事前に理解することが、後悔しない選択につながります。

本記事では、M&Aで会社売却をした後の社長にどのような道が開かれるのかを軸に、売却によって生じる利点や注意すべき点を、実際のケースを踏まえながら解説します。

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M&A後の社長の処遇|3つの基本パターン

M&Aで会社を売却した後の社長の処遇は、一つではありません。買い手企業との交渉や自身の希望によって、その後の関わり方は大きく3つのパターンに分かれます。

どの選択肢が自身にとって最適か、それぞれのメリット・デメリットを理解するところから始めましょう。

処遇パターン メリット デメリット おすすめのケース
社長・役員として続投 ・会社の成長を間近で見届けられる
・経営者としてのキャリアを継続できる
・M&A後の統合プロセス(PMI)に貢献できる
・オーナー経営者としての自由な裁量権は失われる
・買い手企業の方針に従う必要がある
・環境変化への適応が求められる
・会社や事業に強い愛着がある
・買い手企業とのシナジー創出に貢献したい
・まだ経営の第一線で活躍したい
顧問・相談役として関与 ・経営の重責から解放される
・自身の経験や人脈を活かして会社に貢献できる
・新経営陣への円滑な引き継ぎができる
・経営の意思決定権がない
・役割が曖昧だと形骸化する恐れがある
・もどかしさを感じることがある
・経営のプレッシャーからは解放されたい
・徐々に会社との関わりを減らしていきたい
・新経営陣をサポートしたいという気持ちが強い
完全に退任 ・経営の重圧から完全に解放される
・自由な時間を手に入れられる
・売却益を元手に新たな人生を設計できる
・会社とのつながりがなくなり喪失感を感じる可能性がある
・新たな生活リズムへの適応が必要
・社会的な肩書きがなくなる
・ハッピーリタイアを実現したい
・新しい事業や趣味に挑戦したい
・家族との時間やプライベートを大切にしたい

1. 社長・役員として会社に残り成長を牽引する

M&A後も社長や役員として経営に残り、会社のさらなる成長を牽引するケースは多く見られます。売り手側の社長が自ら希望するケースもありますが、買い手企業が社長の経営手腕や業界での人脈、独自の技術・ノウハウを高く評価している場合に、この選択肢が買い手企業側から提案されることもあります。

事業の円滑な引き継ぎ(PMI:Post Merger Integration)を成功させるため、買い手側から一定期間の続投を要請されるのが一般的です。

会社の成長を見届けシナジー創出に貢献できる

本パターンの大きなメリットは、自分が育てた会社が新しい資本や技術と融合し、さらに大きく成長していく過程を見届けられる点です。買い手企業のリソースを活用し、これまで実現できなかった事業展開に挑戦できる可能性もあります。

M&Aによるシナジー(相乗効果)を最大化させるキーパーソンとして、重要な役割を担うことにやりがいを感じる社長も少なくありません。

オーナー経営者としての自由な裁量権は失われる

一方で、会社の所有権は買い手企業に移るため、これまでのようなオーナー経営者としての自由な意思決定はできなくなる点には注意が必要です。最終的な経営判断は、親会社である買い手企業の意向に沿う必要があります。

新しい組織体制や企業文化に適応し、新たな上司や同僚と良好な関係を築く努力が求められる点はデメリットと言えます。

2. 顧問・相談役として新経営陣をサポートする

経営の第一線からは退くものの、これまでの経験や知見を活かして会社をサポートする顧問や相談役といった関わり方もあります。社長が長年かけて築き上げた顧客や取引先との関係、業界内での人脈は、買い手企業にとって価値のある資産です。

新経営陣が事業をスムーズに引き継げるよう、橋渡し役としての役割が期待されます。

経営の重責から解放されるが決定権はない

顧問や相談役になるメリットは、日々の資金繰りや経営判断といった重圧から解放されることです。精神的な負担が軽くなる一方で、自分の経験や知識を活かして会社に貢献し続けられます。

ただし、最終的な意思決定権は新経営陣にあるため、自分の意見が必ずしも採用されるとは限りません。その点に、もどかしさを感じる可能性はあります。

顧問・相談役の主な役割 具体的な業務内容
顧客・取引先の引き継ぎ ・主要な顧客や取引先への挨拶回り
・新経営陣との関係構築のサポート
・長年の信頼関係を維持するための助言
経営ノウハウの伝承 ・業界特有の商慣習や情報の提供
・過去の成功事例や失敗談の共有
・経営判断に関するアドバイス
従業員のケア ・従業員の不安を取り除くための面談
・新体制への円滑な移行のサポート
・キーパーソンとなる従業員の引き留め
技術・専門知識の指導 ・独自の技術やノウハウの伝承
・現場での技術指導や育成支援
・新製品開発に関するアドバイス

3. 会社から完全に退き新たな人生をスタートする

M&Aを機に経営から完全に離れ、新たな人生を歩み始めるのも素晴らしい選択です。創業者利益(売却益)を確保し、悠々自適なセカンドライフを送るハッピーリタイアも夢ではありません。

特に、後継者問題の解決をM&Aの主な目的としている社長に多く選ばれる道です。

選択肢1. 新事業の立ち上げやシリアルアントレプレナーへの道

M&Aで得た資金とこれまでの経営経験を元手に、新たな事業を立ち上げるシリアルアントレプレナー(連続起業家)として再挑戦する道があります。長年やりたかったけれどできなかった事業や社会貢献につながるビジネスなど、可能性は無限大です。

注意点としては競業避止義務の関係で同業での新事業の立ち上げは制限がかかる可能性がございます。

一度経営の重圧から解放されることで、新たな視点やアイデアが生まれることも少なくありません。

選択肢2. 趣味や家族、社会貢献に時間を使う

経営者時代は多忙で犠牲にしてきた、プライベートな時間を満喫するのも一つの選択です。ゴルフや釣り、旅行といった趣味に没頭したり、家族との時間をゆっくりと過ごしたりできます。

また、地域社会への貢献やNPO活動など、これまでとは違う形で社会と関わり、新たな生きがいを見つける方も多くいます。

M&Aで社長の役員報酬・退職金・売却益の手取りはどうなるのか

M&Aを検討する上で、お金の話は避けて通れません。役員報酬や退職金、会社を売却して得られる利益(創業者利益)が、社長のその後の人生設計を大きく左右します。

本章では、M&Aのスキーム(手法)によって、上記の金銭的な側面がどう変わるのかを具体的に見ていきましょう。

M&A後の役員報酬はどうなるのか

M&A後も会社に残る場合、役員報酬の決まり方はM&Aのスキームによって変わります。主に株式譲渡と事業譲渡の2つのケースが想定されます。

株式譲渡:買い手企業の報酬体系に統一される

株式譲渡は、会社の株式を買い手企業に売却することで経営権を移転する手法です。会社は買い手企業の子会社などになるため、役員報酬は親会社である買い手企業の報酬規定や給与テーブルに従うのが一般的です。

M&Aの交渉時に、一定期間は現在の報酬水準を維持するよう約束を取り付けることも可能ですが、長期的には親会社の方針に統一されていきます。

事業譲渡:残存法人での報酬は引き続き決定権を持つ

事業譲渡は、会社の事業の一部または全部を切り出して売却する手法です。事業譲渡の場合、会社の法人格は社長の手元に残ります。

もし売却しなかった事業が残っていれば、残った会社(法人)での役員報酬は、引き続き社長自身が決定権を持ちます。

M&Aスキーム 役員報酬の決定権 特徴
株式譲渡 買い手企業(親会社) ・親会社の報酬規定に準じる
・成果主義が導入されることもある
・交渉次第で一定期間の保証も可能
事業譲渡 社長自身(残存法人) ・売却しなかった事業があれば、その法人での報酬は自由に設定可能
・買い手企業に移籍する場合は、新たな雇用契約に基づく

創業者利益(株式売却益)の税金はどうなるか

株式譲渡によって会社を売却した場合、社長個人は株式の売却益を手にします。この利益は譲渡所得と呼ばれ、所得税・復興特別所得税・住民税が課税されます。

給与所得などとは分離して計算される申告分離課税が適用され、税率は合計で20.315%です。

  • 所得税:15%
  • 復興特別所得税:0.315%(15%×2.1%)
  • 住民税:5%

1億円で会社を売却した場合の手取り額シミュレーション

例えば、会社の株式を1億円で売却できた場合の税金と手取り額を計算してみましょう(取得費などは考慮しない単純計算です)。

  • 売却益(譲渡所得):1億円
  • 税額の計算:1億円×20.315%=2,031万5,000円
  • 手取り額:1億円-2,031万5,000円=7,968万5,000円

このように、売却額が大きくなっても税率が一定であるため、手取り額を予測しやすいのが特徴です。

売却額 税額(約) 手取り額(約)
5,000万円 1,016万円 3,984万円
1億円 2,032万円 7,968万円
3億円 6,095万円 2億3,905万円
5億円 1億158万円 3億9,842万円

会社売却にかかる手数料とは?費用相場と抑えるポイントを徹底解説

役員退職金|手取り額を最大化する節税策

M&Aにおいて、役員退職金の活用は、社長の手取り額を最大化するための有効な節税戦略です。株式の売却益として受け取るのではなく、売却対価の一部を役員退職金として受け取ることで、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

退職金で節税効果が期待できる理由

退職金が税制上優遇されている理由は、主に2つの制度があるためです。

制度 詳細
退職所得控除 勤続年数に応じて、税金がかからない非課税枠(控除)が設けられています。長年会社に貢献してきた功労に報いるための制度です。
1/2課税 退職金の金額から上記の退職所得控除を差し引いた後の金額を、さらに半分(1/2)にしてから税額を計算します。これにより、課税対象となる金額が大幅に圧縮されます。

以下に、退職所得控除額の計算方法をまとめました。

勤続年数 退職所得控除額の計算式
20年以下 40万円×勤続年数 ※80万円に満たない場合は80万円
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

【具体例】勤続30年・退職金5,000万円の場合の税金

仮に勤続年数30年の社長が、退職金として5,000万円を受け取った場合の課税所得を計算してみましょう。

  • 退職所得控除額の計算:800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円
  • 課税退職所得金額の計算:(5,000万円-1,500万円)×1/2=1,750万円

この1,750万円に対して所得税などが課税されます。もし同じ5,000万円を給与として受け取った場合、ほぼ全額が課税対象となるのに比べ、税負担が大きく軽減されることがわかります。

M&Aの最終契約を結ぶ前に、売却対価のうちいくらを退職金として受け取るか、専門家と相談しながら設計することが重要です。

【株式譲渡と事業譲渡】社長の手取りが多いのは?

結論から言うと、株式譲渡の方が社長個人の手取り額が多くなるのが一般的です。その理由は税金の仕組みにあります。

項目 株式譲渡 事業譲渡
利益の帰属先 株主個人 会社(法人)
最初の課税 個人の譲渡所得に対して課税
(税率:20.315%)
法人の利益に対して法人税が課税
(実効税率:約30%〜34%)
その後の課税 なし 法人から個人へ役員報酬や配当で支払う際に、さらに所得税などが課税される(二重課税)
手取り額 多くなる傾向 少なくなる傾向

事業譲渡の場合、売却益はまず会社の利益となり、法人税が課されます。その後、会社に残ったお金を社長個人が受け取る際に役員報酬や配当として再び所得税が課されるため、二重の税負担が発生してしまうのです。

税務面だけを考えれば株式譲渡が有利ですが、買い手側の意向(例:不要な資産を引き継ぎたくない)もあるため、最適なスキームは専門家と慎重に検討する必要があります。

M&Aで社長の連帯保証と債務はどうなるのか

中小企業の経営者の多くが、会社の借入金に対して個人として連帯保証人になっています。これは経営上の大きなリスクであり、万が一会社が倒産すれば、社長個人が会社の債務をすべて背負うことになるのが基本です。

M&Aは、上記のような重いプレッシャーから解放される絶好の機会です。

一般的に社長個人の連帯保証は解除される

M&A(特に株式譲渡)が成立すると、会社の経営権は買い手企業に移ります。それに伴い、金融機関との交渉を経て、社長個人の連帯保証は買い手企業または代表者に引き継がれ、元社長の保証は解除されるのが一般的です。

長年の経営リスクから解放されることは、M&Aがもたらす最大の精神的なメリットの一つと言えます。

解除を確実にするための交渉ポイント

連帯保証の解除は自動的に行われるわけではなく、買い手企業および金融機関との交渉が必要です。後々のトラブルを避けるためにも、M&Aの交渉段階で保証解除を重要な条件として明確に提示し、最終契約書にその旨を明記することが不可欠です。

下表に、主な交渉のポイントをまとめました。

交渉のポイント 具体的なアクション
M&Aの初期段階で意思表示する 買い手候補との最初の面談時から、個人保証の解除が譲渡の絶対条件であることを伝える。
基本合意書に盛り込む M&Aの基本的な条件を定める基本合意書に、クロージング(取引完了)までに個人保証を解除する旨を記載してもらう。
最終契約書で明文化する 最も重要な最終契約書(株式譲渡契約書など)に、「譲渡実行を条件として、売主の個人保証を買主の責任において解除させる」といった条項を必ず入れる。
専門家のサポートを得る M&Aアドバイザーや弁護士に契約書のリーガルチェックを依頼し、保証解除の条項が法的にも有効で、抜け漏れがないかを確認してもらう。

専門家と連携し、契約書上で確実な手続きを踏むことで、安心して経営のバトンを渡せます。

M&Aによる会社売却で社員たちはどうなるのか

社長にとって、自分自身の将来と同じくらいあるいはそれ以上に気になるのが、苦楽を共にしてきた大切な従業員たちの処遇です。「M&Aによって従業員がリストラされるのではないか」と心配される社長は少なくありません。

本章では、M&A後の従業員の雇用や待遇について解説します。

M&Aのみを理由とした解雇は法的に認められにくい

まず重要な点として、株式譲渡によるM&Aの場合、M&Aのみを理由とした従業員の一方的な解雇は、正当な理由として認められにくいです。株式譲渡では株主が変わるだけで会社自体は存続するため、従業員と会社との間で結ばれている雇用契約はそのまま新しい株主(買い手企業)に引き継がれます。

多くの場合、買い手企業は従業員のスキルやノウハウを重要な経営資源と考えており、むしろ従業員の流出を防ぎたいと考えています。

M&A後に勤務地変更を言い渡される可能性はある

雇用契約は維持されますが、業務内容や勤務地が変更になる可能性はあります。M&A後の事業統合や組織再編の一環として行われるもので、通常の会社における人事異動と同じ扱いです。

ただし、雇用契約書に勤務地限定の記載がある場合などを除き、会社は従業員に対して異動を命じる権利(配転命令権)を持っています。

M&A後に待遇や給料はどうなるのか

従業員の給与や待遇も、基本的にはM&A前の労働条件が引き継がれます。しかし、将来的には買い手企業の給与テーブルや人事評価制度に統合されていくのが一般的です。

買い手企業が大手であれば、福利厚生が充実したり給与水準が上がったりするケースも多く、従業員にとってプラスに働く可能性も十分にあります。

M&A後に社員の退職金はどうなるのか

退職金制度も雇用契約の一部として引き継がれます。M&Aの時点で、それまでの勤続年数に応じた退職金がリセットされることはありません。

将来的には買い手企業の退職金制度に移行することが多いですが、その際も従業員が不利益を被らないように、これまでの勤続年数を通算するなどの調整措置が取られるのが通例です。

下表に、M&Aによる会社売却が社員の雇用契約、待遇、給与、退職金に与える影響についてまとめました。

M&Aスキーム 雇用契約の扱い 待遇・給与・退職金
株式譲渡 包括的に承継される。
(雇用契約はそのまま維持)
原則としてM&A前の条件が維持される。
将来的には買い手企業の制度に統合される可能性が高い。
事業譲渡 個別に再契約が必要。
(従業員の同意を得て転籍)
転籍時に新たな労働条件が提示される。
多くの場合、現在の条件が維持・改善される方向で交渉される。

社長がM&Aを検討する代表的な理由

M&Aには、社長それぞれの想いや背景があることがほとんどです。会社の未来と自身の人生を考えた末に、大きな決断であるM&Aの実施に至るのです。

本章では、多くの中小企業の社長がM&Aを検討する代表的な理由を紹介します。

後継者がいない

中小企業にとって深刻な問題の一つが後継者不在です。親族内に適任者がいなかったり、役員や従業員の中に経営を引き継げる人材が見つからなかったりするケースは少なくありません。

M&Aは会社の事業と従業員の雇用を資本力と経営ノウハウのある第三者に託すことで、この後継者問題を解決する有効な手段と言えます。特に後継者不在による廃業を回避し、長年培ってきた技術や顧客、ブランドを守り、従業員の雇用を維持できる点は大きなメリットです。

経営の先行き不安を抱えている

業界の構造変化やデジタル化の波、競争の激化など、将来の経営環境に漠然とした不安を感じている社長も多くいます。自社単独での成長に限界を感じたとき、大手企業の傘下に入ることで経営基盤を安定させ、新たな成長機会を得られます。

結果として、社長個人の精神的なプレッシャーも大きく軽減されるのです。M&Aによって、大手企業のノウハウやリソースを活用し、新たな市場への参入や事業拡大を加速させることが期待できます。

会社売却の利益が欲しい

長年、身を粉にして会社を成長させてきた創業者にとって、努力の結晶を正当な対価として受け取ることは当然の権利です。M&Aによって株式を売却すると、創業者利益(キャピタルゲイン)を獲得できます。

この売却益は社長自身の豊かなセカンドライフの資金や、新たな事業への挑戦の元手として活用できます。適切なM&A戦略によって企業価値を最大化し、より有利な条件で売却することが可能です。

専門家のアドバイスを受けることで、税務上のメリットも享受できます。

従業員の待遇向上や会社の成長を実現したい

愛情を持って育ててきた会社だからこそ、「もっと成長させたい」「従業員にもっと良い待遇を提供したい」と願うのは自然なことです。しかし、自社のリソースだけでは限界がある場合もあります。

M&Aによって大手企業のグループに加わることで、販路拡大や研究開発投資、人材採用、福利厚生の充実などが実現し、会社と従業員の双方にとってより良い未来が開ける可能性があります。また、従業員のキャリアアップの機会を増やし、モチベーション向上にもつながります。

M&Aは単なる会社の売却ではなく、企業の永続的な発展と関係者全体の幸福を追求するための戦略的な選択肢となりえます。

後悔しないM&Aにするために社長がやるべきこと

M&Aは、社長や会社、従業員の未来を左右する重要な経営判断です。「やってよかった」と心から思えるM&Aにするためには、事前の準備と心構えが何よりも大切です。

成功への道筋をつけて後悔を避けるために、戦略的なアプローチが求められます。本章では、後悔しないために社長が押さえておくべき3つのポイントを解説します。

M&Aの目的と売却後の人生設計を明確にする

まず、M&Aを実施する目的を明確にしましょう。後継者問題の解決や創業者利益の獲得、会社のさらなる成長など、目的によって最適な相手企業や交渉の進め方が変わってきます。

単に売却益を得るだけでなく、長期的な視点での目標設定が重要です。同時にM&A後の自身の人生をどうしたいのか(完全に引退するのか、事業に関わり続けるのか、新しいことを始めるのか)を具体的にイメージしておくことが、希望する条件での交渉につながります。

例えば、引退後の生活設計、新たな事業への投資計画などを具体的に立てておくことが有効です。

大切な従業員の雇用と未来を最優先に考える

M&Aの交渉では、売却価格だけでなく従業員の雇用維持や待遇改善を重要な条件として提示しましょう。従業員を大切にする企業文化を持つ買い手を選ぶことは、M&A後の円滑な事業統合(PMI)を成功させる上でも不可欠です。

従業員のモチベーション維持は、M&A後の企業価値に大きく影響します。自社の従業員が新しい環境でも生き生きと働き続けられる未来を想像できる相手かどうかを、しっかりと見極めましょう。

具体的な評価方法としては、買い手企業の従業員に対する姿勢や労働条件、キャリアパスなどを確認することなどが挙げられます。

信頼できる専門家(M&Aアドバイザー)に相談する

M&Aは、法務や税務、会計など高度な専門知識を要する複雑なプロセスです。社長一人の力で進めるのは非常に困難であり、リスクも伴います。

専門家のサポートなしに進めることは、暗闇の中を手探りで進むようなものです。自社の利益を最大化して不利な条件での契約を避けるためにも、実績豊富で信頼できるM&Aアドバイザーに相談することが成功への近道です。

良きパートナーとなる専門家は最適な相手探しから条件交渉、契約締結まで、一貫して社長の味方となってサポートしてくれます。アドバイザー選びは、M&Aの成否を左右する重要な要素です。

複数のアドバイザーを比較検討し、自社のニーズに最適なアドバイザーを選びましょう。

会社売却の完全ガイド|メリット・注意点から相場・流れまでを徹底解説

M&Aで会社を売却した社長のキャリア事例

M&Aを成功させた社長たちは、その後どのような人生を歩んでいるのでしょうか。本章では、M&A後のキャリアの具体的なイメージが湧くような事例を2つご紹介します。

事例1:M&Aによる事業譲渡を経て新たなビジネスに挑戦

卸売業を営むA社は、創業者の代に抱えた借入金により深刻な債務超過に陥り、資金繰りも限界に近づいていました。2代目社長のBさんは、このままでは倒産は避けられないと判断し、弁護士に相談して再生の道を探ります。

中小企業再生支援協議会の支援を受けながらM&A専門業者を通じて買い手を探した結果、A社の販路や地域での知名度に魅力を感じたC社がスポンサーとして名乗りを上げ、事業譲渡が実現しました。

さらに、経営者保証に関するガイドラインを活用したことで、Bさんは個人保証を外し、自宅と最低限の生活資金を守ることができました。会社は引き継がれ、破産も回避できたBさんは、かつて実現できなかった自分の新しいビジネスに挑戦しようとしています。

参考:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)(参考資料4)中小M&Aの事例 ②債務超過であるにもかかわらず成立した事例」

事例2:譲渡側の希望でM&A成立後も一定期間経営に関与

家具製造業を営むD社の社長Eさんは65歳になり、後継者もいなかったため、事業承継・引継ぎ支援センターに相談して会社を引き継ぐ相手を探しました。長年育ててきた事業に強い愛着があり、会社を譲った後も仕事に関わり続けたいと考えていましたが、それは難しいのではと悩んでいました。

D社は品質に定評があり、同業の大手F社が買い手としてすぐに見つかります。Eさんは引き続き関与したいと率直に伝え、F社もその技術力を高く評価して週3日の技術指導役として迎えることを決めました。こうして無事にM&Aによる会社売却が完了し、Eさんは仕事を続けながら、週4日は家族とゆったり過ごすセカンドライフも楽しんでいます。

参考:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)(参考資料4)中小M&Aの事例 ②譲り渡し側経営者が中小M&Aの成立後にも一定期間経営に関与することを条件として成立した事例」

M&Aは社長が新たな人生をスタートさせる最大の転機

M&Aによる会社の売却は、単に会社を手放すことではありません。社長が長年の経営責任という重責から解放され、新たな人生の扉を開くための、前向きで戦略的な決断です。

本記事で見てきたように、M&A後の社長の道は一つではありません。具体的には、会社に残りさらなる成長を見届ける道、顧問として経験を活かす道、完全に引退し自由な時間を満喫する道があります。

いずれの選択をするにせよ、新たな可能性が広がっています。もちろん、後悔のないM&Aを実現し、理想の未来を掴むには、入念な準備が欠かせません。しかし、M&A後の人生プランを具体的に描いた上で買い手と交渉に臨むことで、自分の希望に近い条件で合意しやすくなります。

信頼できる専門家と手を取り合い、自身の希望と従業員の未来を第一に考えて準備を進め、後悔のないM&Aを実現しましょう。

M&Aフォースでは業界に精通した専門チームが、貴社の強みを最大限に引き出すM&A戦略をご提案します。 M&Aに関して、少しでもご興味やご不安がございましたら、まずはお気軽に当社の無料相談をご利用ください。 専門のコンサルタントが、お客様の未来を共に創造するパートナーとして、親身にサポートさせていただきます。

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澤口 良太
監修者

社外取締役(財務)・公認会計士・税理士 澤口 良太

北海道札幌市出身。2003年の学校卒業後、税理士事務所で勤務しながら税理士・公認会計士の資格を取得。KPMGあずさ監査法人を経て、TOMAコンサルタンツや辻・本郷ビジネスコンサルティングでファイナンシャルアドバイザリーサービス(FAS)の責任者を歴任。2020年、独立。澤口公認会計士事務所にて経営やM&Aアドバイザリーを展開している。上場・非上場を問わず企業のオーガニックソースやM&Aによる成長戦略、再生戦略の立案実行をハンズオンにて支援し、多数の実績を有する。2022年のM&Aフォース設立当初から、社外取締役として参画している。

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