ラーメン業界のM&Aと現状の課題|事例や流れについて徹底解説
近年、競争激化や後継者不足など、 ラーメン業界を取り巻く環境は大きく変化しています。
「ラーメン屋を経営しているが、 今後の事業展開に悩んでいる」 「多角的な経営戦略として、 ラーメン業界への参入を検討している」など、経営を軌道に乗せる手段を模索し、頭を抱える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ラーメン業界の現状から、実際のM&A事例や流れを徹底的に解説します。
M&Aを通じて、ラーメン業界の課題を解消し、 新たな可能性を切り拓きましょう。
ラーメン業界の現状と課題
ラーメン業界は、長年にわたり日本の食文化を支えてきた貴重な存在です。
しかし、近年では市場の変化や競争の激化など、多数の課題があり、主に以下3つの課題に直面しています。
- 市場規模は拡大予測
- 小規模・個人経営が8割
- 倒産件数は増加傾向
具体的にみていきましょう。
市場規模は拡大予測
【出典】Fuji Keizai Group「外食主要カテゴリーの2030年市場を予測」
ラーメン業界は、コロナ禍からの回復が着実に進み、2023年にはコロナ前の水準に近づいています。
ラーメン業界の回復を支える要因としては、ライトな飲み会需要の獲得や利用シーンの多様化が挙げられます。
また、店舗ごとの差別化が進み、繁華街店舗の集客数の増加や客層の幅が広がりも要因の1つです。
コロナ禍のように消費者の生活防衛意識が高まる社会環境においても、コストパフォーマンスの高さが市場を下支えしており、今後も安定した成長が見込まれます。
2030年には市場規模が5,230億円に拡大すると予測されていますが、コロナ前にみられた飲み会後の「シメ」としての深夜需要の低迷は今後も継続する見通しです。
小規模・個人経営が8割
ラーメン業界の特徴として、約8割が小規模・個人経営の店舗である点が挙げられます。
この傾向が強い理由は、比較的低い初期投資で開業できることや、独自の味やコンセプトを打ち出しやすい点にあります。
小規模経営のメリットは、オーナーの個性を活かした独自性の高い商品提供が可能であり、地域に根ざしたファン獲得につながる点です。
一方、リスクとしては経営資源やノウハウの制約から多角的な経営戦略を展開しにくく、事業承継の課題も存在します。
小規模・個人経営は景気変動や食材価格の高騰に対する耐性が弱い傾向にありますが、個性的な店舗が多様な顧客ニーズに応えることで、ラーメン市場全体の活性化に貢献しています。
倒産件数は増加傾向
【出典】帝国データバンク「「ラーメン店」の倒産動向(2024年)」
ラーメン業界では近年、倒産件数が急増しています。
2024年の倒産件数は前年比3割超の72件に達し、過去最多を更新しました。
主な倒産理由として、競合店との競争激化が挙げられます。参入障壁の低さから新規店舗が続々とオープンし、同一商圏での競争が激化しています。
また、原材料費は2022年比で1割超増加し、人件費や光熱費も高騰していますが、「ラーメン1杯=千円の壁」と呼ばれる価格転嫁の難しさから、コスト増を吸収できずに経営が圧迫されています。
実際に全国のラーメン店の約3割が赤字経営との調査結果も出ています。
特に経営資源の限られた小規模・個人経営の店舗は影響を受けやすく、後継者不足等の課題も重なり、今後も倒産増加のトレンドが続く可能性が高いです。
ラーメン業界におけるM&Aの動向
ラーメン業界は競争激化に伴い、非常に厳しい状況です。
しかし、厳しい状況下でも課題を解決し、更なる成長を目指す手段として、近年はM&Aが注目されています。
ラーメン業界で行われるM&Aの目的には以下のようなものが挙げられます。
- 経営上の問題解決を目的としたM&A
- 新規参入を目的としたM&A
- 同業との差別化・多様化するニーズへの対応を目的としたM&A
本章では、ラーメン業界におけるM&Aの主な動向について解説します。
経営上の問題解決を目的としたM&A
M&Aは経営上の問題を解決を目的として導入されるケースも多く見られます。
たとえば、個人経営店では、高齢の経営者が後継者不足から廃業を余儀なくされるケースも少なくありません。
後継者・人材不足に悩む小規模店舗の場合、大手企業からの買収で、豊富な経営資源と人材確保、育成体制の構築により、人材不足の問題を解消することが可能です。
また、資金力のある企業による店舗リニューアルや設備投資により、集客力向上にも寄与します。
買収側は店舗の拡大、売却側は経営の安定化と社員の雇用維持を実現できるため、双方にメリットのある取引と言えます。
新規参入を目的としたM&A
ラーメン業界では、異業種企業や個人がM&Aを活用した新規参入を行うケースが増加しています。
ラーメン業界は比較的参入しやすい業種ですが、M&Aを利用することで、ゼロから事業を始めるよりも時間と手間を大幅に削減できます。
特に、既にブランド力やノウハウを持つ店舗を買収できれば、業界経験がなくてもスムーズな事業展開が可能です。
また、地域で実績のある店舗を買収すれば、顧客基盤や地域での認知度を一括で獲得できるため、新たな地域への進出にも効果的です。
さらに、数店舗の一括買収により、事業規模の拡大も図れることから、リスクを抑えた新規事業展開として、M&Aによる新規参入は今後さらに増加すると予想できます。
収益源の多様化を目指す企業にとってM&Aは魅力的な選択肢です。
同業との差別化・多様化するニーズへの対応を目的としたM&A
消費者のラーメンに対するニーズは急速に多様化しており、新規開業数の増加により消費者は店舗に多種多様なバリエーションを求めるようになっています。
競争激化により各店舗が試行錯誤を重ねた結果、メニューの幅が拡大し、高価格帯のラーメンでもリピーターを確保できる市場が形成されています。
上記のような競合激化の環境下で、M&Aを通じて事業の幅を拡大するケースが増加しています。
たとえば、特定のラーメンに強みを持つ店舗を買収し、既存メニューと組み合わせてバリエーションを増やし、新たな調理技術やノウハウの獲得が可能です。
また、異なるコンセプトの店舗を複数展開することで、幅広い顧客層を取り込み、多様化する価格意識にも柔軟に対応できます。
差別化が困難な業界において、M&Aは競争力強化の有効な手段となっています。
ラーメン業界のM&Aのスキーム
ラーメン業界のM&Aにおける主なスキームは、株式譲渡と事業譲渡の2つです。
それぞれのスキームには特徴があり、M&Aの目的や状況によって適切なスキームを選択する必要があります。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
項目 | メリット | デメリット |
株式譲渡 |
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事業譲渡 |
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上記2つの違いについて詳しく解説します。
株式譲渡
項目 | メリット | デメリット |
株式譲渡 |
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株式譲渡は、売却側の株主が保有する株式を買収側に譲渡するスキームです。
ラーメン店を法人として経営している場合に用いられ、経営権そのものが移転するため、M&A後も法人格は存続します。
最大のメリットは手続きの簡便性です。
株式を譲渡するだけで会社の経営権を譲ることができ、店舗、設備、社員、契約関係などが包括的に移転します。
ただし、簿外債務なども含めて引き継ぐ可能性があるため、デューデリジェンスによる事前調査が非常に重要です。
また、複数の株主が存在する場合は、少数株主の同意取得が課題となる可能性があります。
事業譲渡
項目 | メリット | デメリット |
事業譲渡 |
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事業譲渡は、ラーメン店の事業の一部または全部を買収側に譲渡するスキームです。
個人事業主として経営している場合によく活用され、店舗や設備、ノウハウなどの個々の資産が移転します。
法人格は売却側に残るため、複数の事業を展開している場合に特定の事業のみを譲渡したい場合に有効です。
メリットとして、必要な事業・資産のみを選択的に譲渡できる点が挙げられます。
個別契約によって承継対象を決めるため、簿外債務を引き継ぐリスクが低く抑えられます。
ただし、個別の資産ごとに譲渡手続きが必要となるため、手続きは煩雑です。
また、消費税の課税対象となることも注意点として挙げられます。
ラーメン業界のM&A事例
本章では、実際にラーメン業界で行われたM&Aの事例を3つご紹介します。
- 株式会社フルキャストホールディングスのグロービート株式会社の完全子会社化
- 株式会社壱番屋による株式会社竹井の連結子会社化
- 株式会社鉄人化計画による株式会社直久の子会社化
各事例から、M&Aの目的や戦略を読み解いていきましょう。
株式会社フルキャストホールディングスのグロービート株式会社の完全子会社化
フルキャストホールディングスは、2023年6月23日にラーメンチェーン「らあめん花月嵐」を運営するグロービート株式会社の全株式を80億円で取得し、完全子会社化しました。
買収の目的は、新業態進出による収益基盤と、一株当たり利益の向上を図ることです。
グロービート・ジャパンは国内199店舗、海外にも展開する実績ある企業で、コロナ禍以前は営業キャッシュフローベースで年間500百万円超の利益を安定的に計上していました。
買収により、フルキャストは採用・人員提供や経営基盤の提供によるシナジー効果の創出を狙っています。
グロービート側は同族経営からの脱却と上場企業傘下としての信用力向上を企図しており、双方にメリットをもたらす戦略的な買収の一例です。
【参考】株式会社フルキャストホールディングス「グロービート株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ 」
株式会社壱番屋による株式会社竹井の連結子会社化
壱番屋は、2023年3月28日に濃厚豚骨魚介つけ麺で有名な「麺屋たけ井」を京都・大阪で8店舗運営する株式会社竹井の全株式を取得し、連結子会社化しました。
壱番屋の戦略は、カレーハウスCoCo壱番屋に加えた新業態開発によるグループ力強化と企業価値の向上です。
竹井は創業者の竹井光一氏が築き上げた関西屈指の人気つけ麺店として、全国からファンが訪れるほどの商品力を誇っています。
買収により、壱番屋は新たなラーメン事業への参入とブランド力の獲得を実現し、竹井側は安定的な経営基盤と社員の将来性の確保を実現します。
既存事業とは異なる外食業態への展開により、リスク分散と成長機会の拡大が期待されるM&A事例です。
【参考】株式会社壱番屋「「株式会社竹井」の株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ」
株式会社鉄人化計画による株式会社直久の子会社化
鉄人化計画は、2020年4月1日に株式会社フククルフーズから株式会社直久の全株式を取得し、子会社化しました。
同時に、直久がフククルフーズからラーメン事業を譲受しました。
当買収は、「カラオケの鉄人」を展開する鉄人化計画が新業態として飲食店運営事業を強化することで、グループ全体の成長を加速させることを目的としています。
直久は創業百年の歴史を持つ支那そばブランドで、直営5店舗とフランチャイズ15店舗の計20店舗を首都圏中心に展開中です。
鉄人化計画は、既存のカラオケ事業とのメニューや商流等の共有により、サービス充実と運営効率向上のシナジー効果を見込んでM&Aを実行しました。
優れた人材の確保と育成環境整備により、カラオケと飲食の複合型エンターテインメント事業として発展を目指すM&A事例です。
【参考】株式会社鉄人化計画「2020 年4月1日付で鉄人化計画が直久を子会社化、 フククルフーズからラーメン事業を譲受」
ラーメン業界のM&Aの流れ
ラーメン業界のM&Aは、以下のステップで進められます。
- M&A行う理由を明確にする
- M&A仲介会社を利用しM&A先とマッチングする
- 基本条件の交渉をする
- デューデリジェンスを行う
- 最終契約の締結を行う
- クロージングを行う
- PMIを行う
各ステップを理解し、スムーズなM&Aを実現しましょう。
M&Aを行う理由を明確にする
M&Aを実施する前には、以下の項目を踏まえ、M&Aを行う理由を明確にしましょう。
- なぜM&Aを行うのか
- M&Aによってどのような状態を実現したいのか
- 本当にM&Aが最適な手段なのか
ラーメン店経営においては、後継者・人材不足の解消、原材料費高騰への対応、経営規模拡大による戦略、新規参入などを目的としたM&Aが一般的です。
目的を明確にできれば、M&Aのプロセスにおける判断軸が定まり、M&A先の選定や条件交渉においてブレのない一貫した方針を保てます。
曖昧な目的のままM&Aを進めると、期待する効果を得られず失敗に終わる可能性が高くなるため注意が必要です。
M&A仲介会社を利用しM&A先とマッチングする
ラーメン業界のM&Aに精通したM&A仲介会社を活用することで、適切なマッチング先を見つけられます。
仲介会社は業界の動向や相場観を熟知しており、売却希望者と買収希望者のデータを保有しています。
また、M&Aの全体的な流れや手続きに関する専門知識を有しているため、初めてM&Aを行う経営者にとって心強いパートナーです。
ただし、仲介会社によって得意分野や手数料体系が異なるため、複数社を比較検討し、自社のニーズに最も適した会社の選択が重要です。
基本条件の交渉をする
M&A先との間で、譲渡価格、譲渡方法、社員の雇用継続、のれんや屋号の使用権など、基本的な条件について交渉を行います。
ラーメン業界の場合、店舗の立地や顧客層、独自のレシピやノウハウの取り扱い方が重要な交渉ポイントです。
売却側は適正価格での譲渡と社員の雇用維持を重視し、買収側は投資回収期間や将来の収益性を考慮した条件を求める傾向にあります。
条件交渉では、互いの要望を理解し、 win-winの関係を築くことが成功の鍵です。
感情的にならず、客観的なデータに基づいた交渉を心がけましょう。
デューデリジェンスを行う
買収候補先の企業価値やリスクを詳細に調査するデューデリジェンスを実施します。
財務面では売上高、利益率、借入金の状況を確認、法務面では許認可、契約関係、労働問題の有無をチェックしており、今後のトラブル防止に繋がる非常に重要な工程です。
ラーメン業界特有の調査項目としては、食品衛生管理、原材料の仕入れルート、フランチャイズ契約の内容、立地の賃貸条件などが挙げられます。
デューデリジェンスの結果、重大な問題やリスクが発覚した場合は、譲渡価格の見直しやM&Aの中止を検討する必要があります。
専門家の協力を得ながら、客観的かつ徹底的な調査を行うことが重要です。
最終契約の締結を行う
デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な譲渡契約書(株式譲渡契約書または事業譲渡契約書)を締結します。
契約書には譲渡価格、譲渡時期、表明保証、損害補償条項、競業避止義務など、M&Aに関するすべての条件を詳細に記載します。
ラーメン業界のM&Aでは、レシピの取り扱い、社員の雇用条件、既存契約の承継についても明確に定めることが重要です。
契約締結前には弁護士による内容のチェックを受け、予期せぬトラブルを回避しましょう。
一度締結した契約は法的拘束力を持つため、慎重な検討が必要です。
クロージングを行う
最終契約書に基づき、株式や事業の譲渡を実行するクロージング手続きを行います。
譲渡代金の支払い、株式名簿の名義変更、必要な官庁手続き、取引先への通知などを実施し、クロージング後には買収側が経営権を取得し、本格的な統合プロセスが開始します
ラーメン業界の場合、営業許可の承継手続き、社員への説明、既存顧客へのお知らせなど、円滑な事業継続のための準備が必要です。
事前に詳細なスケジュールを作成し、関係者全員が役割分担を理解しておくことで、スムーズなクロージングを実現できます。
PMIを行う
M&A成立後の統合プロセス「PMI」は、M&Aの成否を決める最も重要な段階です。
組織統合、業務プロセスの標準化、システム統合、企業文化の融合などに取り組みます。
ラーメン業界のPMIでは、メニューの統一、仕入れ先の最適化、人材配置の見直し、顧客ロイヤルティの維持などが主要課題です。
買収側のやり方を一方的に押し付けるのではなく、売却側の良い部分を活かしながら段階的に統合を進めていきましょう。
PMIの成功により、M&Aで期待していたシナジー効果を最大限に引き出すことができます。
ラーメン業界のM&A相場
ラーメン業界のM&A相場は、一律の価格を断言することが困難です。
企業規模、収益性、ブランド力、立地条件、店舗数などの要因により評価額が大きく変動するためです。
特に、小規模・個人経営店舗よりも多店舗展開するチェーン企業の方が高額になる傾向があります。
価格算定には、主に次の3つの手法が用いられます。
- 修正純資産法:財務諸表を基に企業価値を算出(最も多用される手法)
- DCF法:将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて算定
- 類似会社比準法:同業他社の取引事例を参考にして算定
また、以下の項目も評価に影響を与えます。
要素 | 影響度合い | 備考 |
EBITDA | 高 | 企業の収益力を示す重要指標 |
立地条件 | 高 | 駅前・商業施設内は高評価 |
ブランド力 | 中高 | 顧客認知度・ロイヤルティ |
店舗数 | 中 | 多店舗展開ほど高額に |
社員の質 | 中 | スキル・定着率が考慮 |
正確な価格を知るためには、M&A仲介会社の企業価値算定サービスを活用することが重要です。
専門家による客観的な評価により、適正な相場を把握しましょう。
ラーメン業界でM&Aをするメリット
ラーメン業界のM&Aは、買収側と売却側の双方にとって、事業の拡大や経営の安定化など、様々なメリットをもたらします。
本章では、それぞれの立場から得られる具体的なメリットについて解説します。
- 買収側のメリット
- 売却側のメリット
買収側のメリット | 売却側のメリット |
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買収側のメリット
- 事業規模の拡大
- ノウハウ・技術の獲得
- 人材の獲得
- 出店コストの削減
- シナジー効果の創出
ラーメン業界のM&A買収は、時間と資金を大幅に節約しながら事業展開を加速できる戦略的手法です。
既に確立されたブランド力や顧客基盤を活用することで、新規参入リスクを最小化しつつ、自社の成長を促進できます。
また、買収先の優れた要素を取り込むことで、業界における競争優位性を構築できる点も大きな魅力です。
売却側のメリット
- 事業承継問題の解決
- 創業者利益の獲得
- 社員の雇用維持
- ブランド・屋号の承継
- 経営リスクからの解放
ラーメン業界のM&A売却は、後継者不足などの経営者の悩みを根本的に解決し、長年築き上げた事業を将来世代に引き継ぐことができます。
売却により得られる資金は引退後の生活資金や新たな事業への投資に活用できるほか、社員の雇用確保により社会的責任も果たせます。
また、買収企業の経営基盤により、従来よりも安定した環境で事業が継続され、ブランド価値の向上も期待できる点が大きな魅力です。
ラーメン業界でM&Aをするデメリット
M&Aはラーメン店の経営において、大きな変革をもたらす可能性を秘めていますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。
M&Aを検討する際には、メリットだけでなくデメリットも十分に理解しておくことが重要です。
買収側のデメリット | 売却側のデメリット |
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買収側のデメリット
- 買収コスト
- PMIの失敗リスク
- 想定外のリスクの顕在化
- 人材の流出
- 評判低下のリスク
ラーメン業界のM&A買収では、統合後の運営面でのリスクが特に高い傾向があります。
業界特有の属人的な要素(料理人の技術、接客スタイル、店の雰囲気)が強いためです。
M&Aを成功させるためには、事前の綿密な調査と統合計画が必要です。
特に、社員の不安を取り除く丁寧なコミュニケーション、既存顧客への配慮、段階的な変更実施を心がけることが重要です。
また、買収前に隠れたリスクを見逃さないよう、財務面だけでなく現場レベルまで深掘りした調査を行いましょう。
売却側のデメリット
- 適正な企業価値評価の困難さ
- 社員の雇用条件変化
- 企業文化の変化
- 経営への関与制限
- 個人保証問題の継続
売却側は、コントロールの喪失と情報の不公平性に直面する傾向があります。
上記の課題を軽減するには、複数の仲介会社や買収候補と接触し、比較検討の機会を増やすことが重要です。
また、契約交渉時に社員の処遇や企業文化の継承について明確な条件を設け、個人保証の解除時期やスケジュールを具体的に定めておきましょう。
売却後の関与については、一定期間のコンサルティング契約やアドバイザーとしての参画を提案しておくと、スムーズな引き継ぎにつながります。
ラーメン業界のM&A先の探し方
ラーメン業界のM&Aを検討する際、理想的なM&A先を見つけることは、その後の事業展開を大きく左右する重要なステップです。
M&A先の見つけ方は主に5つの方法が挙げられます。
- M&A仲介会社を利用する
- 業界団体や交流会に参加する
- 金融機関に相談する
- 自社で直接探す
- オンラインプラットフォームを活用する
本章では、効果的なM&A先の探し方について詳しく解説します。
1. M&A仲介会社を利用する
M&A仲介会社は、M&Aの専門業者として最も信頼できる選択肢です。
専門的な知識や経験が要求されるM&Aの各プロセスにおいて、有用な存在です。
各種資料や契約書の作成・チェック、取引相手との交渉、アドバイスなど、包括的なサポートを提供してくれます。
M&A仲介会社を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。
- 実績と専門性:ラーメン業界のM&A実績が豊富か、あなたの会社の規模や業種に合った専門性を持っているかを確認しましょう。
- ネットワーク:幅広いネットワークを持っているかどうかも重要です。多くのM&A候補先を持っている仲介会社ほど、理想的な相手を見つけやすいです。
- 担当者の対応:担当者が親身になって相談に乗ってくれるか、迅速かつ丁寧な対応をしてくれるかを確認しましょう。
2. 業界団体や交流会に参加する
ラーメン業界には、様々な団体や交流会が存在します。
これらの場に参加することで、他のラーメン店経営者や業界関係者と直接会話し、情報交換が可能です。
M&Aを検討していることを伝えれば、思わぬ出会いが期待できます。
積極的に情報収集を行い、M&Aの可能性を探ってみましょう。
3. 金融機関に相談する
融資取引のある金融機関に対し、M&Aの相談をするのも有効です。
金融機関独自のネットワークで、M&A仲介会社も把握していない案件情報を持っている可能性があります。
また、最近はM&A仲介業務を行う金融機関も増えています。
ただし、全ての金融機関がM&A仲介ができるわけではないので、最終的にはM&A仲介会社に依頼するケースが多くみられます。
4. 自社で直接探す
自社のネットワークや人脈を駆使して、M&A先を直接探すことも可能です。
同業者や取引先、知人などに声をかけ、M&Aに関心のある企業を探してみましょう。
費用を抑えることができますが、時間と労力がかかるデメリットもあります。
5. オンラインプラットフォームを活用する
近年、急増しているのがM&Aマッチングサイトです。
無料会員登録などによって、サイトに登録されている買収希望者・売却希望案件を閲覧し、希望する相手とM&A交渉ができるサービスを提供します。
基本的に当事者間で交渉を進めますが、希望がある場合には別途、手数料を支払うことでM&Aアドバイザーに業務依頼することも可能です。
ただし、情報の信頼性やセキュリティには十分な注意が必要です。
M&Aでラーメン業界の課題を解消しよう
ラーメン業界は今後も市場拡大が予測される一方で、競争激化により倒産件数が増加する厳しい状況にあります。
M&Aは後継者不足や経営資源不足といった業界課題を解決する有効手段として注目されています。
新規参入や事業拡大、経営基盤の強化など、M&Aの活用方法は多様です。
しかし、統合リスクやコスト面での課題も存在するため、慎重な計画と専門家のサポートは不可欠です。
自社の経営課題を明確にし、M&Aを戦略的に活用してラーメン業界での持続的成長を実現していきましょう。