企業価値算定とは?DCF・マルチプル法の計算式や評価額を高めるポイントを徹底解説

企業価値算定とは、企業全体やその株式の価値を算出する手法です。
M&Aを検討する際、自社の企業価値がどれくらいなのか把握することは、適正な売却価格を見極めるうえで欠かせません。
しかし、企業価値算定には複数の手法があり、それぞれ特徴や適用場面が異なるため、どの方法を選ぶべきか迷う経営者の方も多いでしょう。
本記事では、M&Aの売り手側企業の経営者に向けて、企業価値算定の基本的な考え方から、DCF法やマルチプル法といった代表的な算出手法、算定に影響する要素、企業価値を高めるポイント、算定を行うべきタイミング、そして算定にかかる費用相場まで、実務で役立つ情報を解説します。
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企業価値算定(バリュエーション)とは?

企業価値算定(バリュエーション)とは、企業が持つ経済的な価値を金額で定量化するプロセスです。M&Aでは買い手と売り手の交渉の出発点となり、適正な取引価格を導くために欠かせません。
なかでも中堅・中小企業の経営者にとって、自社の価値を客観的に把握すれば、安く買い叩かれるリスクを回避し、納得できる条件で事業承継を実現できます。
ここでは、M&Aにおける企業価値算定の重要性と、混同しやすい用語の違いを解説します。
M&Aにおける企業価値算定の重要性
M&Aにおける企業価値算定は、売り手と買い手の双方が納得できる取引価格を決定するための基盤となります。
客観的な算定結果があれば、売り手は自社の強みを数値で示せるため、交渉を有利に進められます。買い手側も過大評価のリスクを避け、投資判断の根拠として活用できます。
なかでも後継者不在に悩む地方中堅製造業では、企業価値算定を実施しないまま交渉に臨み、相場より低い価格で譲渡してしまう事例が少なくありません。
事前に算定を行えば、以下のメリットが得られます。
- 自社の強みや改善点を数値で把握できる
- 買い手からの提示価格の妥当性を判断できる
- 交渉材料として具体的な根拠を示せる
- 従業員や取引先への説明責任を果たせる
中小企業庁の調査によれば、M&Aを実施した企業の約6割が事前に企業価値算定を行っており、算定済み企業の方が満足度の高い取引を実現しています。
適正な価格での譲渡は、経営者の引退後の生活資金確保だけでなく、従業員の雇用維持や取引先との関係継続にもつながります。
参考:中小企業庁『中小PMIガイドライン』
「企業価値」と「株式価値」の違いとは
企業価値算定を理解するには、企業価値と株式価値の違いを押さえる必要があります。両者は混同されやすいものの、算定の対象範囲が異なります。
| 用語 | 概要 | 計算式のイメージ |
| 事業価値 | 企業が本業で稼ぎ出す力(将来のキャッシュフロー)の価値。企業価値の核となる部分です。 | DCF法などで算出される。 |
| 企業価値 | 事業価値に、事業とは直接関係のない非事業用資産(現金預金、遊休不動産など)の価値を加えたもの。企業全体の価値を示します。 | 企業価値 = 事業価値 + 非事業用資産の価値 |
| 株式価値 (株主価値) | 企業価値から有利子負債(銀行からの借入金など)を差し引いた、株主に帰属する価値。M&Aの株式譲渡価格の基礎となります。 | 株式価値 = 企業価値 – 有利子負債 |
| 時価総額 | 上場企業において、「株価 × 発行済株式数」で計算される市場での評価額。株式価値とほぼ同義ですが、市場の期待や人気も反映されます。 | 時価総額 = 株価 × 発行済株式数 |
企業価値は、株主だけでなく債権者も含めたすべての利害関係者に帰属する価値を指します。一方、株式価値は企業価値から有利子負債を差し引いた金額であり、株主に帰属する価値を表します。
M&Aの実務では、まず企業価値を算定し、そこから有利子負債を差し引いて株式価値を導くケースが一般的です。
例えば、事業価値が10億円、有利子負債が3億円、現預金が1億円の場合、株式価値は8億円(10億円+1億円-3億円)となります。売り手経営者が受け取る対価は、この株式価値が基準となります。
企業価値算定に影響を与える主な要素

企業価値は、単一の要因で決まるわけではありません。
財務状況はもちろん、市場環境や無形資産など、さまざまな要素が複雑に絡み合って形成されます。
評価アプローチを学ぶ前に、どのような要素が価値に影響を与えるのか全体像をつかんでおきましょう。
| 要素 | 概要 | 価値への影響 |
| 財務状況と収益性 | 過去の売上や利益、資産状況など。特に将来キャッシュフローを生み出す力が重視されます。 | 高い収益性や健全な財務体質は、企業価値を直接的に向上させます。 |
| 市場環境と業界動向 | 評価対象企業が属する市場の成長性、競争の激しさ、規制の動向など。 | 成長市場に属している、あるいは高いシェアを誇る企業は高く評価される傾向にあります。 |
| 無形資産 | 技術力、特許、ブランド、顧客基盤など、貸借対照表には現れにくい資産。 | 独自の技術や強力なブランドは、将来の収益源として高く評価され、価値を大きく押し上げます。 |
| 経営体制とガバナンス | 経営陣の能力、組織力、意思決定の透明性など。 | 安定した経営体制や強固なガバナンスは、事業継続性の信頼を高め、リスクを低減させる要素として評価されます。 |
| シナジー効果への期待 | M&Aにおいて、買い手企業との統合によって生まれる相乗効果(売上増加、コスト削減など)。 | 買い手にとってのシナジー効果が大きければ、その分だけ評価額(買収価格)が上乗せされる可能性があります。 |
これらの要素を総合的に分析することが、精度の高い企業価値算定には不可欠です。
企業価値算定で用いられる3つのアプローチ

企業価値を評価する手法は、大きく3つのアプローチに分類されます。
それぞれ異なる視点から企業の価値を測るものであり、どれか一つが正しいわけではありません。
目的や企業の状況に応じて、これらの手法を適切に使い分ける、あるいは組み合わせて評価することが一般的です。
| アプローチ | 視点 | 特徴 | メリット | デメリット | 主な手法 |
| インカムアプローチ | 未来の収益力 | 企業が将来生み出すキャッシュフローを予測し、現在価値に割り引いて評価する | ・成長性や収益性を直接反映できる
・無形資産の価値も織り込める |
・事業計画の予測に依存する
・計算が複雑で恣意性が入りやすい |
DCF法、収益還元法 |
| マーケットアプローチ | 現在の市場評価 | 類似する上場企業やM&A取引の市場価格と比較して相対的な価値を評価する | ・市場の評価を反映できる
・客観性が高く計算が比較的容易 |
・適切な比較対象が見つからない場合がある
・市場の過熱感に影響される |
マルチプル法、類似取引比較法 |
| コストアプローチ | 過去の蓄積資産 | 企業の純資産(資産から負債を引いた額)を基準に評価する | ・客観的な数値に基づき計算が明快
・企業の清算価値に近い |
・将来の収益性を考慮しない
・無形資産が評価されない |
時価純資産法、簿価純資産法 |
M&Aの実務では、まずインカムアプローチ(DCF法)で理論値を算出し、マーケットアプローチ(マルチプル法)で市場の相場観と照らし合わせ、コストアプローチで最低限の価値を確認する、といった複合的な分析が行われます。
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DCF法による企業価値算定の仕組みと計算方法

DCF法は、企業の将来の収益獲得能力を最も重視する評価手法です。
未来の事業計画に基づいて価値を算出するため、M&Aやスタートアップの評価において主に使用されています。
計算プロセスは複雑ですが、その仕組みを理解することは非常に重要です。
DCF法の仕組み
DCF法は、「将来稼ぐお金は、今の時点ではいくらの価値があるか?」といった考え方に基づいています。
例えば、1年後に110万円もらえる権利は、金利が10%だとすれば現在の100万円と同じ価値になります。
この現在の価値に割り引くといった計算を、企業が将来にわたって生み出すフリーキャッシュフロー(FCF)に対して行い、それらを合計することで事業価値を算出します。
DCF法の計算手順
DCF法の計算は、大きく以下の5つのステップで進められます。
| ステップ | 内容 | 概要 |
| Step 1 | フリーキャッシュフロー(FCF)の予測 | 事業計画(通常5〜10年)に基づき、各年度に企業が生み出すFCFを算出する。FCFは事業活動で得た現金から事業維持に必要な投資を差し引いた、企業が自由に使える現金のこと。 |
| Step 2 | 割引率(WACC)の決定 | FCFを現在価値に割り引くための割引率を決定する。将来の不確実性(リスク)を反映するもので、一般的にWACC(加重平均資本コスト)が用いられる。 |
| Step 3 | ターミナルバリュー(TV)の計算 | 事業計画の予測期間が終了した後も、企業が永続的に生み出す価値(TV)を計算する。 |
| Step 4 | 事業価値(EV)の算出 | 予測期間中の各FCFの現在価値と、TVの現在価値を合計して、事業全体の価値(EV)を算出する。 |
| Step 5 | 株式価値の算出 | 算出した事業価値(EV)に非事業用資産を加え、有利子負債を差し引くことで、最終的な株主の価値(株式価値)を求める。 |
このプロセスには多くの予測や仮定が含まれるため、その前提条件の妥当性を慎重に検討する必要があります。
DCF法のメリットとデメリット
DCF法には、次のようなメリットとデメリットがあります。
| 項目 | 内容 |
| メリット | – 企業の成長性や収益性といった個別の事情を評価に直接反映できる。
– 技術力やブランド価値などの無形資産も、将来のキャッシュフローへの貢献度として評価に織り込める。 – 経営戦略の変更が企業価値に与える影響をシミュレーションできる。 |
| デメリット | – 将来の事業計画といった不確実な予測に大きく依存するため、計画の精度が結果を左右する。
– 割引率や永久成長率といったパラメータの設定に主観が入りやすく、評価者によって結果が変動する可能性がある。 – 赤字が続く企業や、将来の予測が困難なスタートアップ企業には適用が難しい場合がある。 |
これらの特徴を理解しておくと、DCF法をどのような場面で活用すべきか判断しやすくなります。
DCF法が適している企業の特徴
DCF法は将来のキャッシュフローを予測する手法であるため、すべての企業に適しているわけではありません。
以下の特徴を持つ企業で、DCF法による算定が効果的です。
- 過去3~5期の業績が安定している企業
- 将来の事業計画を合理的に策定できる企業
- 長期的な取引先との契約がある企業
- 設備投資計画が明確な製造業
- 成長市場に属し将来性が高い企業
逆に、創業間もないスタートアップ企業や、業績が不安定で将来予測が困難な企業では、DCF法による算定は適していません。
このような場合は、コストアプローチやマーケットアプローチを併用し、複数の角度から企業価値を検討することが重要です。
マルチプル法(類似企業比較法)とは

マルチプル法は、市場の「相場感」を基準に企業価値を評価する手法です。
事業内容などが似ている上場企業の株価が、利益や純資産の何倍で評価されているか(マルチプル)を算出し、それを評価対象企業に当てはめて価値を推計します。
DCF法に比べて計算が簡便で、客観的な市場評価を反映できるため、実務で頻繁に用いられます。
マルチプル法の計算手順
マルチプル法の計算は、「類似企業の選定」と「マルチプルの算出・適用」の2ステップで行われます。
基本的な計算式は以下の通りです。
企業価値 = 評価対象企業の財務指標 × 類似企業のマルチプル
| ステップ | 内容 | 具体的なアクション |
| Step 1 | 類似上場企業の選定 | 評価対象企業と事業内容、事業規模、成長ステージ、収益性などが類似している上場企業を複数社選定する。この選定の客観性が、評価の妥当性を大きく左右する。 |
| Step 2 | マルチプルの算出と適用 | 選定した類似企業の財務データから、用いる指標のマルチプル(倍率)の平均値や中央値を算出する。そのマルチプルを、評価対象企業の対応する財務指標に乗じて価値を計算する。 |
実務でよく用いられる倍率には以下があります。
| 倍率の種類 | 計算式 | 特徴 |
| EV/EBITDA倍率 | 企業価値÷EBITDA | 減価償却の影響を受けず比較しやすい |
| EV/売上高倍率 | 企業価値÷売上高 | 赤字企業でも算定可能 |
| PER | 株価÷1株当たり純利益 | 収益力を反映するが負債は考慮されない |
| PBR | 株価÷1株当たり純資産 | 資産価値を重視する場合に有効 |
なかでもEV/EBITDA倍率は、営業活動による収益力を示すEBITDAを基準とするため、設備投資の負担が大きい製造業の比較に適しています。
一般的に製造業のEV/EBITDA倍率は4~8倍程度が目安とされますが、業種や成長性により変動します。
マルチプル法のメリットとデメリット
手軽で客観的な評価が可能なマルチプル法ですが、万能ではありません。
マルチプル法は市場の評価を取り入れられる利点がある一方で、適切な類似企業を見つけにくい課題もあります。実務での活用には、両面を理解しておく必要があります。
| 項目 | 内容 |
| メリット | – 計算が比較的簡単で、短時間で概算価値を把握できる。
– 実際の市場株価に基づいているため、客観性が高く、第三者への説明がしやすい。 – DCF法が使いにくい赤字企業などにも適用できる場合がある。 |
| デメリット | – 事業内容や規模が完全に一致する「類似企業」を見つけることは困難であり、選定には主観が伴う。
– 株式市場全体の動向(バブルや暴落など)に評価額が大きく影響される。 – 評価対象企業独自の強みや将来性が反映されにくい。 |
マルチプル法単独では企業固有の成長性や強みを十分に評価できないため、DCF法と併用し、両者の結果を総合的に判断する方法が推奨されます。
マルチプル法が適している企業の特徴
マルチプル法は、類似企業との比較が可能な企業で効果を発揮します。以下の特徴を持つ企業では、マルチプル法による算定が適しています。
- 上場企業が多く存在する業種に属する企業
- 事業内容が明確で類似企業を特定しやすい企業
- 業界標準的なビジネスモデルで経営している企業
- 将来予測が困難で事業計画の策定が難しい企業
- 簡易的な企業価値の目安を知りたい企業
例えば、金属加工や機械部品製造といった分野では、複数の上場企業が存在するため、類似企業を選定しやすくマルチプル法が有効です。また、M&A検討の初期段階で、自社の価値水準を大まかに把握したい場合にも活用できます。
その他の企業価値算定手法と使い分け

DCF法とマルチプル法以外にも、企業価値算定にはさまざまな手法があります。
企業の特性や算定の目的に応じて、適切な手法を選ぶ必要があります。なかでも資産が豊富な企業や配当を重視する企業、過去のM&A事例を参考にできる企業では、ここで紹介する手法が有効です。
複数の手法を組み合わせれば、より精度の高い算定が可能になります。
純資産価額法(簿価純資産法・時価純資産法)
純資産価額法は、貸借対照表の純資産額を基に企業価値を算定する手法です。簿価純資産法と時価純資産法の2種類があります。
| 手法 | 資産・負債の評価方法 | 特徴 |
| 簿価純資産法 | 会計上の帳簿価額をそのまま用いる | 計算が最も簡単だが、資産の現在の価値を反映していないため、実態から乖離しやすい。 |
| 時価純資産法 | 資産と負債を現在の市場価値(時価)に評価し直して用いる | より企業の現実に近い価値を算出できる。土地や有価証券の含み損益、簿外債務などを反映させるため、専門的な評価が必要。 |
この手法は、企業の将来性を考慮しないため、成長企業よりも資産を多く持つ成熟企業や、清算を検討している企業の評価に適しています。
M&Aでは、買い手にとっての最低保証価格(これ以下の価格では売らない基準)として参考にされることがあります。
純資産価額法が適している企業
- 不動産や設備など有形資産を多く保有する企業
- 赤字が続き将来の収益予測が困難な企業
- 清算を前提とした企業価値算定
- 資産管理会社や持株会社
配当還元法
配当還元法は、株主が将来受け取る配当金を現在価値に割り引いて株式価値を算定する手法です。配当政策が安定している企業で有効です。
配当還元法の計算式は「年間配当額÷還元率」です。還元率は、投資家が期待する利回りであり、一般的に10%程度が用いられます。
例えば、年間配当が1株当たり100円で還元率が10%の場合、1株の価値は1,000円(100円÷0.1)となります。
配当還元法が適している企業
- 安定した配当を継続している企業
- 少数株主の株式評価
- 相続税や贈与税の算定
類似取引比較法
類似取引比較法は、過去に実施された類似企業のM&A取引価格を参考に、自社の企業価値を算定する手法です。マルチプル法と似ていますが、上場企業の株価ではなく、実際のM&A取引価格を基準とします。
類似取引比較法では、過去のM&A事例から、売却価格と財務指標の倍率を算出します。
例えば、類似企業が売上高の0.8倍で売却された事例があれば、自社の売上高に0.8倍を掛けて企業価値を推定します。
類似取引比較法が適している企業
- 同業他社のM&A事例が豊富な業種
- 市場環境が類似している時期の取引
- 取引条件が公開されている事例がある場合
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企業価値算定を実施すべきタイミングと準備

企業価値算定は、M&Aのプロセスにおいて複数の段階で実施されます。
それぞれのタイミングで目的が異なるため、適切な時期に適切な精度で算定を行う必要があります。
なかでも売り手経営者は、交渉を有利に進めるために、早い段階から自社の価値を把握しておくことが重要です。
ここでは、企業価値算定を実施すべき4つのタイミングと、各段階で必要な準備について解説します。
M&A検討初期段階での簡易算定
M&Aを検討し始めた初期段階では、まず簡易的な企業価値算定を実施し、自社の価値水準を把握します。この段階での算定は、M&Aの実施可否を判断するための目安として活用されます。
簡易算定では以下の手法がよく用いられます。
- 時価純資産法による資産ベースの評価
- 類似企業のマルチプル法による相場観の把握
- 年買法(営業利益の3~5年分)による簡易評価
- M&A仲介会社による無料の簡易査定
これにより、交渉の方向性や売却可能性の初期的な判断が可能です。
本格的な交渉前の詳細算定
買い手候補との交渉に入る前には、詳細な企業価値算定を実施します。この段階での算定結果は、希望売却価格を設定する根拠となり、交渉の出発点となります。
詳細算定では以下の準備が必要です。
- 過去3~5期分の決算書の整理
- 今後5年程度の事業計画の策定
- 資産と負債の時価評価
- 無形資産(技術力、顧客基盤など)の整理
- 専門家(公認会計士、M&Aアドバイザー)への依頼
算定結果は、買い手候補に提示する企業概要書にも記載されるため、根拠が明確で説得力のある内容が求められます。事業計画の前提条件や算定の根拠を、買い手に論理的に説明できる準備が重要です。
デューデリジェンス時の再評価
基本合意書を締結した後、買い手企業はデューデリジェンス(買収監査)を実施します。この段階で、財務内容や事業リスクが詳細に調査され、企業価値が再評価されます。
デューデリジェンスの結果、簿外債務や想定外のリスクが発見されれば、企業価値が減額される可能性があります。
例えば、未払い残業代が多額に存在する場合や、主要取引先との契約が不安定である場合などです。
売り手経営者としては、デューデリジェンスで減額されないよう、事前に自社の問題点を洗い出し、改善しておく必要があります。
定期的な自社価値の把握の重要性
M&Aを検討していない段階でも、定期的に自社の企業価値を把握しておくことには大きな意味があります。企業価値の推移を追跡すれば、経営施策の効果を測定でき、改善すべき点が明確になります。
定期的な企業価値算定のメリットは以下の通りです。
- 経営判断の指標として活用できる
- M&Aの適切なタイミングを見極められる
- 突然のM&A提案にも対応できる
- 事業承継計画の策定に役立つ
- 金融機関との交渉材料となる
M&Aなどの具体的なイベントがなくても、年に一度など定期的に自社の価値を算定することは、経営上非常に有益です。
自社の価値の推移を見ることで、経営戦略が正しく機能しているかを確認できます。
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M&A売却前に企業価値を高める5つの方法

企業価値は固定的なものではなく、経営努力によって向上させることが可能です。
M&Aを有利に進めるためには、売却を決断する前から戦略的に企業価値を高めておくことが重要です。
| 戦略 | 具体的なアクションプラン |
| 1. 収益性の向上 | – 新規顧客の開拓、既存顧客へのアップセル・クロスセルによる売上増加
– 不採算事業からの撤退、業務プロセスの見直しによるコスト削減 – 独自性の高い商品・サービスの開発による利益率の改善 |
| 2. 財務状況の改善 | – 不要な資産(遊休不動産、過剰在庫など)を売却し、キャッシュを創出する
– 借入金の返済を進め、自己資本比率を高める – 運転資本(売掛金、在庫など)を効率的に管理し、キャッシュフローを改善する |
| 3. 組織体制の強化 | – 特定の個人に依存しない組織体制を構築する(属人性の排除)
– 優秀な人材の採用と育成、従業員のエンゲージメント向上 – 明確な経営理念やビジョンを策定し、組織全体に浸透させる |
| 4. 無形資産の可視化と活用 | – 特許や商標などの知的財産を適切に登録・管理する
– 独自の技術やノウハウをマニュアル化し、組織の資産として継承する – 顧客リストや取引実績などのデータを整備し、その価値をアピールする |
| 5. ガバナンスの強化 | – 月次決算の早期化など、経営状況を迅速に把握できる体制を整える
– コンプライアンス(法令遵守)体制を整備し、潜在的なリスクを低減する – 株主総会や取締役会を適切に運営し、意思決定の透明性を確保する |
これらの取り組みは、M&Aのためだけでなく、企業の持続的な成長そのものにつながります。
企業価値算定にかかる費用相場と依頼先

中堅・中小企業では、費用を抑えながらも信頼性の高い算定を実施するために、依頼先の選定が重要です。
ここでは、企業価値算定にかかる費用相場と、主な依頼先の特徴を解説します。
企業価値算定にかかる費用相場
企業価値算定のみを単独で依頼する場合の費用は、企業の規模や評価の複雑さによって大きく変動しますが、数十万円から数百万円が一般的な相場です。
M&A仲介サービスの一環として行われる場合は、仲介手数料に含まれていることが多く、個別の費用は発生しないケースもあります。
| 依頼内容 | 費用相場の目安 |
| 簡易的なリポート | 30万円~100万円程度 |
| 詳細な評価リポート | 100万円~500万円以上 |
| M&A仲介の一環 | 成功報酬(レーマン方式)に含まれる場合が多い |
企業価値算定の依頼先例
企業価値算定を依頼できる専門家には、以下のような選択肢があります。
| 依頼先 | 特徴 | 費用体系 |
| M&A仲介会社 | M&Aの実務に精通しており、交渉を見据えた実践的な評価が得意。取引成立を目的とする。 | 成功報酬型が多く、着手金無料の会社もある。M&Aフォースのように、完全成功報酬制を採用している企業もある。[3] |
| コンサルティング会社 | 戦略的な視点からの評価や、価値向上策の提案に強みを持つ。 | タイムチャージ(時間単価)やプロジェクトフィーが一般的。 |
| 公認会計士・税理士事務所 | 財務・会計・税務の専門家として、正確で緻密な評価を行う。相続・事業承継案件にも強い。 | タイムチャージや固定報酬が一般的。 |
| 金融機関(銀行・証券会社) | 大規模なM&Aや資金調達案件において、豊富な実績と情報網を持つ。 | プロジェクトフィーや成功報酬など案件による。 |
自社の目的や規模に合わせて、最適なパートナーを選ぶことが重要です。
まずは無料相談などを活用し、複数の専門家の話を聞いてみることをおすすめします。
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DCF法やマルチプル法といった複数の手法を理解し、自社に適した算定を実施すれば、買い手との交渉を有利に進められます。
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M&A検討の初期段階から専門家に相談し、客観的な企業価値を把握したうえで、納得できる条件での事業承継を実現しましょう。
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