業種別M&A

営業権譲渡によるタクシー会社M&Aガイド|業界の現状と課題、手続きも解説

タクシー業界では、ドライバーの高齢化による人手不足や後継者不在に加え、ライドシェア・自動運転への対応に伴う投資負担など複数の構造的な課題を抱えています。こうした環境変化に対応する有力な選択肢として、営業権譲渡によるM&Aを活用する動きが広がっているのが現状です。

本記事では、タクシー業界の現状や課題を踏まえて、営業権譲渡によるM&Aの手法や進め方、相談先を解説します。

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タクシー業界の現状と課題

現在のタクシー業界は、大きな変革の波に直面しています。事業の舵取りを考えるうえで、まずは業界が抱える課題と将来の動向を正確に把握することが不可欠です。本章では、特に重要となる3つのポイントについて解説します。

ライドシェア・自動運転推進への対応が急務

テクノロジーの進化は、タクシー業界の根幹を揺るがす可能性があります。特に、スマートフォンアプリを介して一般ドライバーが有償で乗客を運ぶライドシェアは、海外で急速に普及しています。

日本でも2024年春以降、タクシー会社が運行管理を担うことを条件とした日本版ライドシェアが解禁されました。これは、ドライバー不足を補う一手となる可能性がある一方で、既存事業者にとっては新たな競争相手の出現を意味します。

また、将来的には自動運転技術の導入も視野に入っており、業界構造そのものが変わる可能性も秘めています。

参考:国土交通省「日本版ライドシェア、公共ライドシェア等について」

乗務員年齢の高齢化による後継者不在への懸念の高まり

タクシー乗務員の高齢化は、業界全体が抱える深刻な課題です。若手のなり手が減少し、多くの事業者でドライバー不足や後継者不在の問題が顕在化しています。

厚生労働省によると、令和6年時点におけるタクシー運転者の平均年齢は60.2歳で、全産業平均(44.1歳)よりも16.1歳高いです。また、ハイヤー・タクシー運転者の有効求人倍率は3.38で、全職業平均(1.14)よりも約3倍高く、採用が難しくなっている状況がうかがえます。

上記の問題は、日々の運行体制の維持を困難にするだけでなく、事業自体の存続を危うくする可能性があります。そのため、事業承継を円滑に進めるための手段として、M&Aへの関心が高まっているのです。

参考:厚生労働省「統計からみるハイヤー・タクシー運転者の仕事」

大手企業による業界再編型のM&Aが活発化

ドライバー不足や後継者問題といった課題を背景に、タクシー業界ではM&Aによる再編が活発化しています。特に、豊富な資金力を持つ大手企業グループが、地方の中小タクシー会社を買収するケースが増えている状況です。

これは、譲渡側(売り手)にとっては後継者問題の解決や従業員の雇用維持につながる一方、譲受側(買い手)にとっては事業規模の拡大や営業エリアの確保というメリットがあります。この流れは今後も続くとみられており、業界全体の勢力図が大きく変わっていく可能性があります。

タクシーの営業権譲渡で用いられるM&A手法

タクシー会社のM&Aを検討する際、主に3つの手法が用いられます。各手法には特徴があり、許認可の承継方法や引き継ぐ資産・負債の範囲が異なります。

自社の状況や目的に合わせて最適な手法を選択することが重要です。

株式譲渡

株式譲渡は、会社のオーナーが保有する株式を買い手に売却することで、会社自体を引き継ぐ手法です。会社は法人格を維持したまま存続するため、国土交通大臣からの運送業許可(営業権)もそのまま引き継がれます。

従業員の雇用契約や取引先との契約なども個別に結び直す必要がなく、手続きが比較的シンプルな点がメリットです。ただし、会社の資産だけでなく、負債や潜在的なリスク(簿外債務など)もすべて引き継ぐことになるため、事前のデューデリジェンス(買収監査)が重要です。

事業譲渡

事業譲渡は、会社の事業の一部または全部を個別に選んで売買する手法です。例えば、タクシー事業のみを切り離して譲渡することができます。

買い手は必要な資産(車両、営業所など)や従業員だけを選んで引き継げるため、不要な負債を抱えるリスクを避けられるというメリットがあります。

ただし、営業権(運送業許可)は会社に紐づくものであるため、買い手側は新たに取得するか、それも含めて譲り受けなければなりません。運送業許可を譲り受ける場合は、譲受側の運送業営業所を管轄する地方運輸支局に対し、一般乗用旅客自動車運送事業の譲渡譲受認可申請を行う必要性が生じます。

以上の理由から、事業譲渡は手続きに時間・手間がかかる点がデメリットです。

参考:関東運輸局「タクシー事業を始めるには」

合併

合併は、2つ以上の会社が契約によって1つの会社になる手法です。すべての権利義務が包括的に承継されるため、強力なシナジー効果が期待できます。

しかし、株主総会の特別決議や債権者保護手続きなど、法的に複雑な手続きを踏む必要があります。また、異なる企業文化を持つ従業員の統合(PMI)も大きな課題となるため、他と比べてハードルが高い手法です。

営業権譲渡によるタクシー会社M&Aのメリット・デメリット

M&Aは、譲受側(買い手)と譲渡側(売り手)の双方にとって大きなメリットをもたらす可能性があります。一方で、注意すべきデメリットやリスクも存在します。

本章では、それぞれの立場からみたメリットとデメリットを整理します。

譲受側(買い手)のメリット・デメリット

事業規模の拡大や新規参入を狙う買い手にとって、M&Aは時間を買う有効な手段です。

メリット ・時間と労力の削減:新規で許可を取得するより早く事業を開始できる
・経営資源の一括確保:営業権、車両、ドライバー、営業所をまとめて獲得できる
・早期収益化:既存の顧客基盤やノウハウを活用し、すぐに収益を上げられる
・特定エリアへの進出:空港や駅の入構権など、新規では得にくい権利を獲得できる
デメリット ・PMIの難しさ:異なる企業文化や人事制度の統合に摩擦が生じやすい
・潜在的リスクの継承:簿外債務や訴訟リスクなどを引き継ぐ可能性がある
・過大な買収対価:適正な企業価値評価を誤ると、高値づかみになるリスクがある
・従業員の離職:経営方針の変更などにより、主要なドライバーが離職するおそれがある

譲渡側(売り手)のメリット・デメリット

後継者問題や経営不振に悩む売り手にとって、M&Aは事業と従業員を守るための選択肢となり得ます。

メリット ・後継者問題の解消:親族や社内に後継者がいなくても事業を継続できる
・事業の存続と発展:大手グループの傘下に入ることで、事業がさらに発展する可能性がある
・創業者利益の獲得:株式や事業を売却することで、まとまった資金を得られる
・経営負担からの解放:個人保証の解除や日々の経営のプレッシャーから解放される
デメリット ・従業員の処遇:雇用条件が変わり、従業員が不利益を被る可能性がある
・情報漏洩リスク:交渉過程で、会社の機密情報が外部に漏れる危険性がある
・経営権の喪失:会社の経営に関与できなくなる(一部残るケースもある)
・契約不履行のリスク:契約内容に不備があると、将来的に責任を問われる可能性がある

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営業権譲渡によるタクシー会社M&Aで評価を高めるポイント

M&Aを成功させるためには、自社の価値を正しく評価し、買い手にとって魅力的な状態にしておくことが重要です。特に以下の2点が、企業価値評価において重要なポイントです。

車両整備を整えておく

タクシー会社の資産価値を大きく左右するのが、保有する車両の状態です。単に運行できる状態を維持するだけでなく、安全性、快適性、効率性を最大限に高めることが重要です。

日頃から法定点検や定期的なメンテナンスを徹底するのはもちろんのこと、予防整備にも力を入れ、故障リスクを最小限に抑えましょう。また、整備記録や修理履歴を電子データ化し、迅速かつ正確に提示できるように準備しておくことが重要です。

写真や動画も活用することで、整備状況をより具体的に伝えられます。車両の内外装の清潔さは基本ですが、最新の清掃技術や抗菌処理を導入することで、顧客満足度向上につながるだけでなく、企業イメージ向上にも貢献します。

さらに、燃費効率の良い車両への積極的な入れ替えや、環境に配慮したエコカーの導入は、企業の社会的責任(CSR)をアピールするうえで有効です。自動運転技術や安全運転支援システムなど、最新技術の導入状況も積極的に開示しましょう。

車両台数が多ければアピールする

タクシー事業は、地域ごとに運行できる車両の総台数が規制されている場合があり、規制の厳しさによって車両台数の価値は大きく変動します。保有する車両台数の多さは、事業規模の大きさや市場シェアを示すだけでなく、将来的な事業拡大の可能性を示唆するものです。

新規参入や増車が難しい地域であればあるほど、既存の営業権や車両の希少価値が高まります。単に車両台数をアピールするだけでなく、車両の稼働率、平均走行距離、顧客からの評価などのデータも提示することで、価値をより具体的に示せます。

競合他社との比較データを示すことも有効です。さらに、特定のエリアにおける独占的な営業権や、特定の顧客層(例:企業、ホテル)との連携がある場合は、それらも合わせてアピールすることで、車両台数の価値を最大限に引き出せます。

今後の市場動向を踏まえたうえで、自社の車両台数の戦略的な価値を提示することが重要です。

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営業権譲渡によるタクシー会社M&Aの手続き・流れ

タクシー会社のM&Aは、一般的なM&Aの手続きに加えて、運送業許可の承継に関する行政手続きが必要となる場合があります。本章では、全体像と特有の手続きについて解説します。

一般的なM&Aの流れ

M&Aの交渉開始から最終的な統合完了までには、複数のステップが存在します。各ステップを詳細に理解することで、M&Aをより円滑に進められます。

以下に、各ステップの詳細な内容と注意点を加えました。

ステップ 主な内容 詳細と注意点
1. 準備・戦略策定 M&Aの目的を明確にし、専門家(仲介会社、FA、弁護士、会計士など)を選定する。 ・M&Aの目的(事業拡大、新規市場参入、技術獲得など)を具体的に定める。
・社内の体制構築(担当者の選定、情報管理体制の整備)を行う。
・秘密保持契約(NDA)の締結を検討する。
2. 相手企業の選定 候補となる企業を探し、打診を行う(ノンネームシートなどを使用)。 ・ターゲット企業の選定基準(業種、規模、地域、技術力など)を明確にする。
・企業データベース、業界ネットワーク、専門家などを活用して候補企業をリストアップする。
3. トップ面談・交渉 経営者同士が面談し、基本的な条件について交渉する。 ・経営理念、企業文化、事業戦略などについて相互理解を深める。
・譲渡価格、スキーム、スケジュールなどの基本条件について交渉する。
4. 基本合意契約の締結 譲渡価格やスケジュールなどの基本条件を書面で確認する。 ・基本合意契約(MOU、LOI)の内容を慎重に検討する。
・独占交渉権、秘密保持義務、デューデリジェンスへの協力義務などを定める。
5. デューデリジェンス 買い手が売り手企業の財務・法務などを詳細に調査する。 ・財務デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、ビジネスデューデリジェンスなどを行う。
・専門家(会計士、弁護士、コンサルタントなど)を活用して、リスクや課題を洗い出す。
6. 最終契約の締結 調査結果を基に最終的な条件を確定し、譲渡契約を締結する。 ・デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な譲渡価格や条件を決定する。
・表明保証条項、補償条項、解除条項など、重要な条項について慎重に検討する。
7. クロージング 株式や事業の引き渡し、対価の決済を行う。 ・契約に基づき、株式や事業の引き渡し手続きを行う。
・対価の決済(現金、株式など)を行う。
8. PMI(統合プロセス) 組織、業務、意識の統合を進める。 ・組織体制の統合、業務プロセスの統合、ITシステムの統合などを行う。
・従業員の意識改革、企業文化の融合を図る。

M&Aは複雑なプロセスであり、専門的な知識や経験が不可欠です。専門家のアドバイスを受けながら、慎重に進めることが成功への鍵と言えます。

営業権譲渡の流れ

事業譲渡の手法で営業権を譲渡する場合、上記のM&Aプロセスと並行して(または最終契約締結後に)、営業権譲渡の手続きを進める必要があります。この手続きは専門的な知識を要するため、行政書士などの専門家に依頼するのが一般的です。

一般乗用旅客自動車運送事業の譲渡譲受認可申請手続き

事業譲渡の場合、買い手側で、一般乗用旅客自動車運送事業の譲渡譲受認可申請手続きを行います。この申請手続きは、新規で許可を取得する場合と同様に厳格な審査基準が適用されます。

所定の要件を満たしていることを証明する多数の書類を添付し、管轄の運輸支局へ申請書を提出します。

譲渡譲受認可後の手続き

無事に譲渡譲受の認可が下りた後も、事業を開始するまでにはさまざまな手続きが必要です。手続きを怠ると、事業を開始できない、あるいは行政処分の対象となる可能性があるため注意しなければなりません。

手続き 内容
車両の名義変更 車両を売り手から買い手の名義に変更する。
緑ナンバーの取得 事業用自動車としての緑ナンバーを取り付ける。
保険の加入・名義変更 自動車損害賠償責任保険や任意保険に加入、または名義を変更する。
各種届出 運行管理者・整備管理者の選任届などを提出する。
表示・備品 車体に会社名を表示し、料金メーターや日報などを備え付ける。
譲渡譲受終了届の提出 すべての手続きが完了し、営業を開始できる状態になったら提出する。

参考:一般社団法人東京都個人タクシー協会「譲渡譲受認可後の流れ」

タクシー営業権譲渡・M&Aの相談先

タクシー会社のM&Aは、法務、税務、行政手続きなど多岐にわたる専門知識が必要です。独断で進めると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。

目的に応じて、適切な専門家に相談することが成功への近道です。

相談先 主な役割・専門分野 相談すべきケース
M&A仲介会社 M&Aの相手探し(マッチング)
企業価値評価(バリュエーション)
交渉の仲介、全体の進行管理
M&Aを検討し始めた段階
適切な売却・買収相手を見つけたい
M&Aのプロセス全体をサポートしてほしい
行政書士 運送業許可の譲渡譲受認可申請
各種行政手続きの代行
営業所や車庫に関する法令調査
事業譲渡の手続きを進めたい
許認可に関する法的な要件を確認したい
弁護士 基本合意書、最終契約書の作成・レビュー
法務デューデリジェンスの実施
法的リスクの洗い出しと対策
契約内容に法的な問題がないか確認したい
潜在的な法的リスクを回避したい
公認会計士・税理士 財務デューデリジェンスの実施
企業価値評価の算定
M&Aに伴う税務の相談
会社の財務状況を正確に把握したい
税務上、有利なスキームを検討したい

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タクシー会社の営業権譲渡を成功させる鍵はM&A専門家との連携

タクシー業界は、規制緩和と強化の歴史を繰り返しながら、現在はライドシェアの登場や人材不足といった大きな変化の時代を迎えています。このような状況下で、営業権の譲渡およびM&Aは、事業の存続と成長を実現するうえで有効な経営戦略となり得ます。

しかし、タクシー会社の営業権譲渡の手続きは複雑であり、成功させるためには運送業に関する深い知識とM&Aの実務経験が不可欠です。買い手にとっては適正な価格で将来性のある事業を引き継ぐこと、売り手にとっては自社と従業員の未来を託せる相手に円滑に事業を承継することがゴールとされます。

双方にとって最良の結果を得るためには、信頼できるM&A仲介会社や行政書士、弁護士といった専門家と早い段階から連携し、戦略的にプロセスを進めていくことが重要です。

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澤口 良太
監修者

社外取締役(財務)・公認会計士・税理士 澤口 良太

北海道札幌市出身。2003年の学校卒業後、税理士事務所で勤務しながら税理士・公認会計士の資格を取得。KPMGあずさ監査法人を経て、TOMAコンサルタンツや辻・本郷ビジネスコンサルティングでファイナンシャルアドバイザリーサービス(FAS)の責任者を歴任。2020年、独立。澤口公認会計士事務所にて経営やM&Aアドバイザリーを展開している。上場・非上場を問わず企業のオーガニックソースやM&Aによる成長戦略、再生戦略の立案実行をハンズオンにて支援し、多数の実績を有する。2022年のM&Aフォース設立当初から、社外取締役として参画している。

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