会社売却にかかる税金はいくら?手取りを最大化する計算方法と節税対策を解説

会社売却の決断は、経営者や法人にとって人生の大きな節目です。長年育ててきた会社への想いとともに、売却によって得られる対価、いわゆる創業者利益への期待もあるでしょう。
しかし、多額の税金で手取り額が大幅に減少するという事態は、避けなければなりません。本記事では、会社売却を検討し始めた経営者の方が税金で損をしないために、知っておくべきポイントを網羅的に解説します。正しい知識を身につけ、万全の準備で売却に臨みましょう。
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会社売却における2つの手法

会社売却における税金を理解する上で、まず押さえるべきは代表的な売却手法である株式譲渡と事業譲渡の違いです。どちらの手法を選ぶかによって、誰が、どのような税金を納めるのかが大きく変わります。
税金の計算方法にも違いが見られるため、あらかじめそれぞれの手法をよく理解してください。大まかな違いは以下の表のとおりです。
| 比較項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 | 
| 売る人 | 株主(オーナー経営者など) | 会社(法人) | 
| 売却物 | 会社の株式 | 会社の事業(一部、もしくは全部) | 
| 納税者 | 株主個人または法人株主 | 会社(法人) | 
| 手続き | 比較的、簡便 | 個別の資産移転などが必要で煩雑 | 
それぞれについて具体的に解説します。
株式譲渡:株式を譲り渡す方法
株式譲渡とはオーナー経営者が株式を売却し、経営権を譲渡する手法です。売り手には創業者利益の獲得や後継者問題の解決、個人保証からの解放といったメリットがあります。買い手との取引に問題がなければ短期間で手続きを終えられるため、極力手間を減らしたい方にも魅力的な手法です。
ただし、買い手が100%の株式取得を希望する場合、反対株主や所在不明の株主が存在すると契約が成立しない可能性があります。また、不採算の事業があるときは、譲渡価額が相場より低くなる恐れにも注意が必要です。
事業譲渡:会社の事業を譲り渡す方法
事業譲渡とは、会社が保有している事業の一部または全部を売却する手法です。不採算事業やノンコア事業を売却すると、経営資源の成長が見込まれる事業に集中できます。事業規模を縮小し、組織のスリム化を図ることも可能です。
さらに、事業売却によって得た資金を、新たな投資や借入金の返済に充てることもできます。つまり、事業資金の調達や今後の事業展開などを見越して、事業譲渡を行うのも一つです。
ただし、売却した事業に従事していた従業員の雇用を維持する場合、買い手との交渉が不可欠です。事業売却後、同一事業の実施を一定期間制限される競業避止義務が課される場合がある点にも注意しましょう。事業を手放すことによる、将来的な自社成長への影響も考慮しなければいけません。
株式譲渡と事業譲渡における税金の違い

M&Aを検討する際、株式譲渡と事業譲渡のどちらを選択するかは、税務面でも大きな影響を及ぼします。どちらも会社の経営権や事業を譲り渡す手法ですが、課税される税金の種類や税率、納税義務者が異なるため、手取り額に大きな差が生じることがあります。
また、買い手側の税務メリットも変わってくるため、双方にとって最適な選択をすることが重要です。ここでは、それぞれの売却手法で、どのような税金がかかるのかを詳しく見ていきましょう。
株式譲渡によって発生する税金
個人株主が株式を売却して利益(譲渡所得)を得た場合、その利益に対して所得税と住民税が課せられます。株式譲渡の税金は、売却によって得た金銭の全額ではなく、株式を取得する際にかかった費用などを差し引いた利益に対して発生するのが特徴です。通常の事業所得とは異なる扱いになるため、注意しましょう。
一方、法人株主が売却した場合、その利益(譲渡益)に対して法人税が発生します。個人株主が売却したときとは異なり、他の利益と合算して税金の計算を行うのが特徴です。
なお、売却手続きの内容によっては、別途不動産取得税や印紙税、みなし配当に対する課税が発生する恐れがある点に注意が必要です。ここからは、株式譲渡における税金について解説します。
所得税
譲渡所得には、原則として15%の所得税が適用されます。これは土地や建物、株式などの資産を売却して得た利益に対して課される税金です。ただし、2037年12月31日までは、復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加算されるため、実際の税率は15.315%です。
復興特別所得税は譲渡所得の計算において非常に重要であり、税額を正確に算出するためにも忘れずに加算しましょう。なお、個人の所得税とは別に計算されることから、譲渡益が発生した場合は別途申告と納税が必要です。
住民税
譲渡所得には一律5%の住民税がかかります。所得税と合わせると、合計で20.315%の税率が適用されます。所得税と同様、不動産や株式などの資産を譲渡した際に発生する所得に対して課税されるものです。税率は一律であるため、所得金額に関わらず一定の割合で計算されます。
法人税
株主が個人の場合、法人税は発生しません。株主が法人の場合にのみ、譲渡益に対して法人税と法人住民税、法人事業税が課せられます。法人住民税と法人事業税の税率は各自治体によって異なり、法人実効税率は会社の規模や所得によって変動します。
不動産取得税
会社名義の不動産は、株式譲渡によって所有者が変わるわけではないため、不動産取得税は基本的に発生しません。これは不動産の登記名義が会社名のまま変わらないためです。
したがって個人の不動産売買とは異なる点に注意しましょう。ただし、株式譲渡と合わせて別途不動産の取得を行う場合は、その利益に対して不動産取得税が発生します。何を売却したいのかを考えたうえで、税金の計算をする必要があります。
印紙税
株式譲渡における契約書は印紙税法上の課税文書ではないため、原則として印紙は不要です。しかし、売却代金の受領時に領収書を発行する場合は記載する金額に応じて、定められた収入印紙を貼付する必要があります。
例えば、5万円以上の金額が記載された領収書には印紙税が発生します。印紙税額は領収書に記載された金額によって異なり、税法で定められています。収入印紙の貼付を怠ると過怠税が課されるため、金額をしっかりと確認し、適切に手続きすることが重要です。
参考:No.7140印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
みなし配当に対する課税
会社売却において、第三者ではなく発行会社自身が株式を買い取る自己株式取得を選択するケースがあります。この場合、売却代金のうち当初の出資額を超える部分はみなし配当として扱われ、通常の株式譲渡とは異なる課税方式が適用されます。
みなし配当が発生すると、個人株主の場合は配当所得として総合課税の対象となり、給与所得などと合算して累進税率が適用される点に注意が必要です。株主が法人の場合は受取配当金として処理され、源泉徴収の後に二重課税を避けるための益金不算入制度が適用されます。
事業譲渡によって発生する税金
事業譲渡の場合、税金を納めるのは会社(法人)です。売却益に対して法人税等がかかるほか、譲渡する資産の種類によっては消費税なども発生します。
さらに、事業譲渡の対価として受け取った金銭は会社の資産として計上され、その後の事業活動に使用されます。つまり、適切な税務対策を講じると、税負担を軽減しながら事業譲渡後の会社の経営を安定させることが可能です。
ここからは、事業譲渡によって発生する具体的な税金について解説します。
法人税等
事業の売却益には法人税等が課税され、実効税率は会社の規模や所得によって異なります。売却益は他の利益と合算されるため、全体の課税所得が増加し、結果として納税額が増える可能性があります。
法人税の課税対象となるのは、売却価額から取得費と経費を差し引いた金額です。負債が多い場合や諸経費が譲渡価額を上回った場合は、税金は発生しません。
消費税
譲渡対象となる資産に課税資産が含まれる場合、その部分に10%の消費税が課税されます。具体的には建物や機械設備、車両、のれんなどが課税対象です。一方で、土地や有価証券は非課税として扱われるため、消費税は発生しません。
事業譲渡契約を締結する際には、譲渡対象資産を明確に区分し、課税対象となる資産の価額を正確に把握することが重要です。
印紙税
事業譲渡契約書は課税文書に該当するため、契約金額に応じた収入印紙を貼付しなければいけません。また、代金の領収書にも印紙が必要です。事業譲渡契約書の場合、不動産や営業権などの譲渡が含まれることが多く、高額な印紙税が必要となることもあります。
収入印紙の貼付義務は、印紙税法によって定められており、契約書の種類や記載金額によって税額が異なります。印紙税を納付しない場合、過怠税が課せられる可能性があるため注意が必要です。
不動産取得税
事業用の不動産(土地・建物)を買い手側が取得した場合、不動産取得税が課されます。これは、不動産を取得したという事実に対して課税される税金です。不動産取得税は固定資産税評価額の4%が課せられます。
登録免許税
事業譲渡に伴う不動産の所有権移転登記では、原則買い手側が登録免許税を負担します。登録免許税は、移転する不動産の固定資産税評価額に対して課税され、土地と建物それぞれに対して、固定資産税評価額の2%が課税されます。ただし、令和8年3月31日までの間に登記を受けた場合は、軽減税率措置により税率1.5%が適用される点に注意しましょう。
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株式譲渡で会社売却する場合の税金計算方法

それでは、実際に税額を計算する方法を見ていきましょう。
まずは、中小企業のM&Aで一般的な株式譲渡のケースです。計算方法を理解しておけば、売却交渉の段階で手取り額をシミュレーションでき、より戦略的な意思決定が実現します。
個人株主における税金の計算
譲渡所得は以下の計算式で算出されます。
| 譲渡所得=売却価格ー取得費ー譲渡費用 | 
取得費とは、株式を取得した際に支払った金額です。創業時の資本金払込額や、他の株主から買い取った際の購入価格などが該当します。譲渡費用とは、株式を売却するために直接かかった費用です。具体的には、M&A仲介会社への手数料や税理士や弁護士への報酬、株価算定費用などが含まれます。
譲渡所得を計算する際の注意点として、取得費や譲渡費用をできる限り正確に把握することが挙げられます。領収書や契約書などの証拠書類をきちんと保管しておきましょう。もし、取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として計上できますが、可能な限り実費で計算するのがおすすめです。
譲渡所得を明確にしたら、先ほど紹介した所得税と住民税と合わせた20.315%を掛けます。例えば、株式の売却価格を3億円、株式の取得費を5,000万円、譲渡費用を500万円とした場合、譲渡所得は以下のように計算されます。
| 譲渡所得=3億円ー(5,000万円+500万円)=2億4,500万円 | 
この譲渡所得である2億4,500万円に対して、20.315%の税率を適用すると税額は以下のとおりです。
| 税額=2億4,500万円×20.315%=約4,977万円 | 
したがって、実際の手取り額は以下のように計算します。
| 手取り額=3億円ー4,977万円=2億5,023万円 | 
このように売却価格が3億円でも取得費や譲渡費用、そして税金を差し引くと、手元に残る金額は約2億5,023万円です。売却交渉の際は売却価格だけでなく、実際の手取り額を意識することが重要といえます。
法人株主における税金の計算
法人が株式を保有している場合、会社売却で得た譲渡益に対して法人税が課税されます。個人株主とは異なり、分離課税ではなく総合課税によって課税されるため、他の利益と合算した金額に税金が発生します。具体的な計算式は以下のとおりです。
| 税金=(譲渡益+他の事業所得)×法人税率 | 
法人税率は会社の規模や所得によって異なり、法人住民税や法人事業税を含めた実効税率も変動します。なお、会社売却による譲渡益が8億円、他の事業所得が3億円、法人税率が23.2%の場合、税金額は以下のように計算します。
| 税金=(8億円+3億円)×23.2%=2億5,520万円 | 
したがって、株式売却による実質的な手取り額は以下のとおりです。
| 手取り額=8億円-2億5,520万円=5億4,480万円 | 
このように、法人株主の場合は他の事業所得と合算されるため、個人株主よりも高い税率が適用される可能性があります。
事業譲渡で会社売却する場合の税金計算方法

次に、事業譲渡の税金について解説します。事業譲渡では納税者が会社(法人)となり、法人税等と消費税が主な税金です。譲渡益(会計上の利益)は、以下の計算式で算出されます。
| 譲渡益=売却価格ー譲渡資産の簿価 | 
例えば、会社の売却代金が15億円、譲渡資産の簿価が5億円の場合は、以下のように計算します。
| 譲渡益=15億円ー5億円=10億円 | 
この譲渡益が、事業年度における会社の他の損益と合算され、最終的な課税所得に対して法人税等が課されます。実効税率は会社の規模などによりますが、約30〜40%が目安です。
なお、事業譲渡で注意すべき点が消費税です。前述のとおり、譲渡する資産は消費税がかかる課税資産と、かからない非課税資産に分けられます。
| 資産の種類 | 該当例 | 
| 課税資産 | 建物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、ソフトウェア、のれん(営業権)、棚卸資産(商品・製品)など | 
| 非課税資産 | 土地、有価証券(株式など)、売掛金などの債権 | 
事業譲渡契約を結ぶ際に課税資産がいくらあるのかを把握しておき、適切に計算することが重要です。
会社売却後に必要となる税務

会社売却が完了しても、それで終わりではありません。税金の申告・納税といった重要な手続きが残っています。また、高額な取引であるため、後日、税務署による調査が行われる可能性も念頭に置く必要があります。
| 納税者 | 売却手法 | 対象税金 | 申告・納税時期 | 
| 個人株主 | 株式譲渡 | 所得税・復興特別所得税 | 売却した年の翌年2月16日〜3月15日 | 
| 住民税 | 翌年6月頃に通知が届き、原則4回に分けて納付 | ||
| 会社(法人) | 事業譲渡 | 法人税等、消費税 | 事業年度終了の日の翌日から2カ月以内 | 
個人で手続きを行った場合
株式譲渡によって利益を得た個人株主は、原則として、会社を売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税と復興特別所得税を納税する必要があります。住民税については、確定申告の情報に基づいて各市区町村が税額を計算し、その年の6月頃に納税通知書が送付されます。
確定申告を忘れると、無申告加算税や延滞税といったペナルティが発生する可能性がある点に注意が必要です。また、税務署からの調査が入ることも考えられるため、期限内に正確な申告を行うことが重要です。
上記は一般的なケースであり、売却内容や個別の状況によって申告・納税時期が異なる場合があります。例えば、不動産を売却した場合は、譲渡所得税の申告が必要となり、所得税と同様に翌年の2月16日〜3月15日に行います。
また、NISA口座で運用していた株式を売却した場合は、非課税となるため申告は不要です。税務署や税理士に相談し、ご自身の状況に合わせた正確な情報を得ることが重要です。特に、税制は頻繁に改正されるため、最新情報を常に確認しましょう。
法人で手続きを行った場合
事業譲渡によって利益を得た会社は、その事業年度が終了した日の翌日から2カ月以内に法人税等及び消費税の申告と納税を行う必要があります。さらに、中間申告が発生する場合もあるため注意しましょう。
法人で手続きを行う場合、個人のときと異なり、税務処理が複雑になることが一般的です。会社の規模や事業内容によっても申告内容は変わるため、専門的な知識が求められます。税理士などの専門家と連携し、適切な申告を行うことが重要です。
また、税務調査が入る可能性も考慮し、日頃から経理処理を適切に行い、証拠書類をきちんと保管しておくことが大切です。税法改正にも注意し、常に最新の情報に基づいて対応しましょう。
会社売却における節税対策

会社売却における税金を可能な限り抑え、手取り額を最大化するためには事前の対策が極めて重要です。ここでは、実務でよく用いられる代表的な節税対策を紹介します。
株式譲渡における4つの節税方法
株式譲渡は事業承継やM&Aにおいて重要な選択肢ですが、税金対策を怠ると大きな負担となる可能性があります。適切な対策を講じていれば税負担を軽減し、手残りを最大化することが可能です。まずは、株式譲渡における効果的な節税方法を4つ見ていきましょう。
1.役員退職慰労金の活用
役員退職慰労金の活用は、株式譲渡において効果的で広く用いられる節税策です。会社売却のタイミングでオーナー経営者が退職し、売却価格の一部を会社から役員退職慰労金として受け取ります。
これにより、個人の手取り額は変わりませんが、内訳が株式の譲渡所得と退職所得に分かれます。退職所得は長年の功労に報いるため、税制上非常に優遇されているため節税に役立つ仕組みです。
退職所得に対する所得税の計算は以下のとおりです。
| 退職所得に対する所得税=(退職金支給額-退職所得控除額)×1/2×税率-控除額 | 
その結果、税率約20%の譲渡所得を、より低い実効税率の退職所得に振り替えることで、全体の税負担を大幅に軽減できます。ただし、不相当に高額な退職金は税務署から否認されるリスクがあるため、適切な金額設定が重要です。
2.概算取得費の特例適用
概算取得費の特例適用は会社の設立が古かったり、創業時における資本金の払込証明書など、株式の取得費を証明する書類を紛失していたりする場合に有効な方法です。概算取得費の特例を使うと、売却価格の5%を取得費とみなして譲渡所得を計算できます。
実際の取得費が不明な場合や、売却価格の5%よりも低い場合に特例を使うと、課税対象となる譲渡所得を圧縮でき、節税につながります。例えば、売却価格が1,000万円の場合、取得費は50万円とみなされる仕組みです。
ただし、実際の取得費が売却価格の5%よりも高い場合は、通常の計算方法を用いるほうが有利になる可能性があります。あくまで取得費がわからないときの対応方法として覚えておきましょう。
3.第三者割当増資による経営権の移転
第三者割当増資による経営権の移転とは、株式を売却するのではなく、買い手に対して新たに株式を発行(増資)して経営権を移転させる手法です。既存株主は株式を売却しないため、譲渡所得が発生せず、所得税や住民税は課税されません。ただし、この手法には以下のような注意点があります。
- 新株を発行すると既存株主の持株比率が低下(希薄化)する
- 増資により資本金が増えると、法人住民税の均等割が増加する可能性がある
- 時価よりも著しく低い価額で新株を発行すると、買い手側に贈与税が課されるリスクがある
この手法は、後継者不足に悩む中小企業が、経営権を円滑に承継するために有効な手段となり得ます。しかし、上記の注意点に加え、株価の算定は非常に複雑であり、専門的な知識が必要です。税務上の影響も考慮する必要があるため、税理士や会計士などの専門家への相談は必須といえるでしょう。
第三者割当増資を実施すると第三者と経営に関わることになるため、関係者との関係構築が必須です。なお、第三者割当増資は、既存株主にとって持株比率が低下するため、株式譲渡ほど直接的な資金獲得手段にはつながりません。
経営権の移転と資金調達を同時に実現したい場合に有効ですが、既存株主が売却益を得たいときには適していない点に注意が必要です。
4.需要ありの資産のみ売却
もし会社が複数の事業を営んでいる場合や、買い手が特定の資産のみを欲しがっている場合に検討できる方法です。会社を丸ごと売却するのではなく、必要な資産だけを事業譲渡の形式で売却します。
これにより、必要な資産まで含めて高値で売却するよりも利益を抑えられ、結果として法人税等の負担を軽減できる可能性があります。事業譲渡は、売却する資産を特定できるため、買い手側のデューデリジェンス(資産査定)も比較的容易です。
また、会社全体を売却するよりも、交渉や手続きが簡素化される場合もあります。譲渡する資産の範囲を明確にし、契約書に詳細を記載すれば、後々のトラブルも避けられます。さらに、従業員の雇用契約の承継についても慎重な検討が必要です。
事業譲渡における2つの節税方法
事業譲渡は、事業の再編や経営戦略の見直しにおいて有効な手段ですが、税金対策も重要な要素です。ここからは、事業譲渡における2つの節税方法に焦点を当て、詳細な解説と具体的な対策を紹介します。
1.会社の分割
会社分割は、買い手が特定の事業のみを求めている場合に有効な手法です。まず、売却したい事業を新会社として独立させ、その株式を譲渡することで、事業譲渡と同様の効果を得つつ、税務上は株式譲渡として扱われます。
一定の要件を満たす適格分割であれば、資産の移転に課税されることなく会社分割が可能です。事業譲渡で発生する可能性のあった法人税や消費税の負担を回避できる場合があります。
ただし、会社分割には、債権者保護手続きや株主総会決議といった法的な手続きを伴います。正しい手順の元、会社分割を行えば後々のトラブルを避けられるでしょう。
また、分割後の事業運営体制や従業員の配置など、組織再編後の計画も重要です。会社分割は事業譲渡に比べて手続きが複雑ですが、税務上のメリットが大きい場合もあるため、専門家と相談しながら検討することをおすすめします。
2.売却益を経費に計上
事業譲渡によって大きな利益が出た場合、その利益を相殺できるような経費を同じ事業年度内に計上すると課税所得を圧縮できます。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 他の赤字事業との損益通算
- 含み損のある資産の売却(売却損の計上)
- 役員や従業員への決算賞与の支給
- 将来のための設備投資の前倒し
ただし、売却益の計上はあくまで会社の経営判断として合理的な範囲で行う必要があり、節税目的の過度な経費計上は認められません。
特に、税務署は事業譲渡益のような一時的な収入に対して、不自然な経費計上がないか厳しくチェックします。損益通算を行う場合は、赤字事業の合理的な経営状況を説明できるように準備しておく必要があるでしょう。
含み損のある資産の売却においても、市場価格を逸脱しない適正な価格で行うことが重要です。決算賞与の支給は、従業員の貢献度や会社の業績に見合った金額とし、設備投資は将来の事業計画に基づいて検討する必要があります。
税理士などの専門家と相談し、税務上のリスクを十分に検討した上で、適切な節税対策を行うことが大切です。経営判断として説明がつく範囲での対策であれば、税務調査でも問題になりにくいでしょう。
会社売却後の注意点

会社売却は高額な取引となるため、税務署による調査の対象となる可能性があります。特に以下のポイントが厳しくチェックされます。
- 役員退職慰労金の妥当性
- 株式の売却価格
- 取得費や譲渡費用の適切性
- 事業譲渡における消費税の区分
役員退職慰労金の妥当性は、金額が功績倍率法などの合理的な算定方法に基づいているか、株主総会での承認手続きが適切に行われているかが確認されます。
株式の売却価格については、第三者間取引であれば市場価格、同族間取引であれば適正な株価算定が行われているかがポイントです。著しく低い価格での譲渡は、贈与とみなされる可能性があります。
取得費や譲渡費用の適切性は、実際に支払った費用であることを証明する書類が必要です。架空の経費計上や過大な費用は否認されるリスクがあります。事業譲渡における消費税の区分は、課税資産と非課税資産の区分が適切か、のれん(営業権)の評価が妥当かなどが精査されます。
また、税務調査に備え、以下の書類を整理・保管しましょう
- M&Aに関する契約書
- 株価算定根拠資料
- 役員退職慰労金に関する書類
- 譲渡費用に関する書類
M&Aに関する契約書には株式譲渡契約書または事業譲渡契約書、秘密保持契約書、基本合意書などが該当します。株価算定根拠資料として株価算定書(第三者機関が作成したもの)や財務諸表、事業計画書などを用意しましょう。
役員退職慰労金に関する書類には株主総会議事録や退職金規程、功績倍率の算定根拠資料、過去の類似事例などを準備するのがおすすめです。譲渡費用に関する書類にはM&A仲介会社への支払いに関する契約書や請求書・領収書、税理士などへの報酬に関する契約書、その他の譲渡に直接関連する費用の証憑が挙げられます。
税理士や会計士と連携し、税務上のリスクを事前に洗い出し、適切な対応策を講じることが重要です。税務調査が入った場合でも、これらの準備があればスムーズに対応でき、指摘事項を最小限に抑えることが可能です。
さらに、税務調査では過去の会計処理や税務申告についても遡って調査される可能性があるため、日頃から適切な会計処理と税務申告を心がけることが大切です。M&Aの実行前から税務顧問と密に連携し、税務上の潜在的なリスクを把握した上で適切な対策を講じれば将来的な税務調査のリスクを軽減できます。また、税務調査に際しては、税務調査官の質問に対して誠実かつ正確に回答することが重要です。
M&Aフォースでは業界に精通した専門チームが、貴社の強みを最大限に引き出すM&A戦略をご提案します。 M&Aに関して、少しでもご興味やご不安がございましたら、まずはお気軽に当社の無料相談をご利用ください。 専門のコンサルタントが、お客様の未来を共に創造するパートナーとして、親身にサポートさせていただきます。
『M&A無料相談』を利用してみる →会社売却の税金に関する相談先

ここまで見てきたように、会社売却の税金は非常に複雑で専門的です。どの手法を選ぶか、どの節税策を適用するかによって、手取り額が数千万円、場合によっては数億円単位で変わることもあります。そのため、自己判断で進めるのではなく、専門家に相談することが成功への鍵といえるでしょう。
ここでは、会社売却の税金に関する相談先を紹介します。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、買い手と売り手の間に入り、交渉から契約締結までをサポートする専門家です。多くの仲介会社は税理士や公認会計士と提携しており、税務面も含めた総合的なアドバイスを提供してくれます。何から始めれば良いかわからない段階でも、まずは相談してみるのが良いでしょう。
M&Aは複雑なプロセスを伴うため、専門家のサポートは不可欠です。特に、会社の価値評価や交渉戦略、契約書の作成など、専門知識が求められる場面が多く存在します。仲介会社は、これらのプロセスを円滑に進めるためのサポートを提供し、M&Aの成功率を高めることに貢献します。また、適切なアドバイザーを選ぶことは、M&A後の統合プロセス(PMI)の成功にもつながるでしょう。
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『M&A無料相談』を利用してみる →税理士
税金の専門家である税理士は、節税対策や税務申告において不可欠なパートナーです。ただし、税理士にも得意分野があり、通常の顧問税理士がM&Aの税務に精通しているとは限りません。
M&Aにおける税務は複雑で専門性が高く、通常の税務とは異なる知識や経験が求められます。専門性の低い税理士に依頼すると、本来受けられるはずの税制優遇措置を受けられなかったり、不必要な税金を支払うことになったりする可能性があります。そのため、M&Aの実績が豊富な税理士を選べば税務上のリスクを最小限に抑え、最大限の利益を得ることが期待できるでしょう。
公認会計士
公認会計士は会計・監査の専門家であり、M&Aにおいては会社の価値算定(バリュエーション)や財務デューデリジェンス(買収監査)などで重要な役割を果たします。税務に精通している公認会計士も多く、M&Aのプロセス全体を見据えたアドバイスが期待できます。
特に、会社の財務状態を正確に把握し、適正な売却価格を算定することはM&Aの成否を左右する重要な要素です。公認会計士による客観的な評価は、買い手との交渉においても説得力を持ちます。
また、財務デューデリジェンスでは、簿外債務や偶発債務の有無、会計処理の適切性などを詳細に調査します。これにより、売却後のトラブルを未然に防ぐことが可能です。
さらに、M&A後の統合プロセス(PMI)における会計・税務面でのサポートも提供できます。買収後のスムーズな事業運営を支援してもらうことで、M&Aの成功をより確実なものとします。
弁護士
M&Aのプロセスでは秘密保持契約や基本合意契約、最終契約書など、多くの法的な書類を取り交わします。弁護士は、これらの契約内容が法的に問題ないか、売り手にとって不利な条項が含まれていないかをチェックする法務デューデリジェンスを担当します。
つまり、将来的なトラブルを避けるためにも弁護士のサポートも欠かせません。法務デューデリジェンスでは契約書の条項だけでなく、関連する法律や判例も調査し、潜在的なリスクを洗い出します。
特に、知的財産権や労働問題、環境問題などは、M&A後に大きな問題に発展する可能性があるため、入念な調査が必要です。また、弁護士は交渉の段階から参加し、クライアントの利益を最大限に守るためのアドバイスを提供します。
会社売却にかかる税金を正しく理解しよう

会社売却は、経営者人生における集大成ともいえる重要なイベントです。税金に関する正しい知識を身につけ、信頼できる専門家をパートナーに選ぶことが成果を最大化し、次のステージへ円滑に進むための鍵となります。
会社売却後の資金は、経営者の新たな挑戦を支える原動力です。しかし、税金対策を怠ると手取り額が大幅に減少し、その後の計画に影響を及ぼす可能性があります。売却前に綿密なシミュレーションを行い、税理士やM&Aアドバイザーなどの専門家と連携しながら、最適な売却戦略を立てることが重要です。
また、売却後の資金運用についても、税金を考慮した上で計画を立てるようにしましょう。適切な節税対策と資金運用を行うことで、会社売却を成功へと導き、将来の安定につなげられます。
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