M&A基礎知識

中小企業の廃業理由とは|相談先とM&Aで廃業を回避するポイントも解説

中小企業の廃業理由とは|相談先とM&Aで廃業を回避するポイントも解説

近年、中小企業の廃業理由が多様化するなか、自分の代で幕を引く自主廃業を選択する企業が増えています。長年黒字経営を続けてきたにもかかわらず、引き際を見定める経営者も少なくありません。

本記事では、中小企業が廃業を選択する背景やリスクを深掘りし、相談すべき専門機関と廃業以外の選択肢について解説します。従業員の雇用や技術を守りながら、経営者がリタイアするためのM&Aについても事例を交えて解説するので、参考にしてみてください。

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中小企業を取り巻く状況と廃業の動向

中小企業を取り巻く状況と廃業の動向

近年、中小企業において、経営破綻による倒産とは異なり、経営者が自主的に事業をたたむ休廃業・解散が増えています。帝国データバンクの調査によると、2024年の休廃業・解散件数は6万9,019件に上り、倒産件数(9,901件)を大きく上回る状況が続いています。

背景の一つは経営者の高齢化です。2024年時点で休廃業・解散した企業の経営者年齢は平均71.3歳まで上昇し、70代以上が全体の63.2%を占めるようになりました。

さらに、コロナ禍での各種支援策が縮小・終了したことに加え、原材料価格やエネルギー価格、人件費の高騰が収益を圧迫したことで、事業の将来を悲観したあきらめ廃業も増えています。

項目 2024 年データ 備考
休廃業・解散件数 69,019件 倒産件数の約7倍
倒産件数 9,901件 前年から増加傾向
廃業時の代表者平均年齢 71.3歳 過去最高を更新
黒字廃業の割合 51.1% 業績が良くても事業継続を断念

「黒字廃業」と「後継者不足問題」の関係性と解決策

中小企業が廃業を選択する理由

中小企業が廃業を選択する理由

中小企業の経営者が長年築き上げた事業の幕引きを決断する背景には、一人では解決できない複数の要因が絡み合っていることが少なくありません。以下では中小企業の主要な廃業理由を解説します。

後継者不在

身近な後継者候補が見つからない後継者不在は、中小企業の廃業理由として最も多く挙げられる課題です。中小企業庁の調査では、廃業予定企業の約29%が後継者難を理由として挙げています。

かつては親族が継ぐ親族内承継が一般的でしたが、現在は子の職業選択の自由や、経営リスクへの懸念から承継が進みません。従業員や第三者へ引き継ぐ方法もありますが、経営を任せられる人材がいない可能性もあります。

適任者が見つからないまま経営者の引退時期が近づくと、事業が黒字であっても廃業を選ばざるを得ません。

経営者自身の年齢・健康

経営者自身の年齢・健康状態の変化は、事業継続の判断に直結します。日本政策金融公庫の2023年調査によれば、廃業を決めた理由の第1位は「気力・体力の衰え(53.1%)」でした。

病気やケガで突然入院が必要になった際、代わりの責任者がいない企業は少なくありません。中小企業の多くは社長の個人技や人脈で成り立っており、本人が動けなくなると事業や取引が成立しない可能性があります。

健康面に不安を感じ始めると、取引先や従業員に迷惑をかける前に、自分の代で整理したいと考えるのは自然なことです。気力と体力が充実しているうちに、廃業の手続きを進める決断を下す経営者が増える傾向にあります。

事業の将来性に対する不安

事業の将来性に対する不安も、廃業に踏み切る大きな要因です。

  • 業界全体の市場縮小
  • 新たな競合の出現
  • デジタル化の波への対応

デジタル化の進展や市場ニーズの変化により、従来のビジネスモデルが通用しなくなり、廃業を検討するケースが増えています。ネット通販の普及によって小規模小売店の客足が遠のき、設備投資の回収が困難になるといったケースです。

自分の代までは乗り切れても、10年~20年後に利益を出し続けられる確信が持てない場合、多くの経営者は早期の撤退を検討します。

赤字が膨らんでからでは清算費用も捻出できません。手元に資金が残っており、債務超過に陥る前のタイミングで廃業を選ぶのは、会社を守るための賢明な経営判断ともいえます。

人材不足

人材不足は中小企業の運営を根本から揺るがします。帝国データバンクの調査では、2023~2024年度の人手不足倒産が2年連続で過去最多を大幅に更新しました。特に建設業や運送業、サービス業では、現場を支える職人やスタッフの確保が極めて困難です。

求人を出しても応募がなく、既存の従業員の高齢化も進んでいる現場が増加しています。受注はあるのに人手が足りず、仕事を断らざるを得ない状況が続けば将来的な成長は望めません。

採用コストや人件費の負担も重く、安定したサービス提供ができないと判断した結果、廃業を選ぶ経営者が後を絶たない状況です。

創業時からの意向(継がせるつもりがない)

創業時からの意向として、最初から事業を誰かに継がせるつもりがない経営者も一定数存在します。日本政策金融公庫の調査では、廃業を決めている経営者の約4割が、当初から「自分の代でやめるつもりだった」と回答しました。

自分のライフワークとして事業を立ち上げた場合、家族に苦労をさせたくないために、承継をあえて望まないケースも珍しくありません。特定の高度な技術や、社長個人の資格に依存する仕事では、他者への引き継ぎが物理的に難しい場合もあります。

無理に延命させるのではなく、自分自身が納得できる形で事業を完結させることは、一つの経営目標の達成とも捉えられます。

中小企業が廃業を選択するメリット

中小企業が廃業を選択するメリット

廃業は経営者にとってリスタートの機会となる側面もあります。出口戦略の一つとして、廃業がもたらす具体的なメリットを確認していきましょう。

会社をたたむには?手続き・費用・判断基準を徹底解説

経営者の精神的・肉体的負担を軽減できる

経営者の精神的・肉体的負担を軽減できる点は、廃業の大きなメリットです。

中小企業の社長は、日々の営業活動に加え、資金繰りや人事トラブルなど、休む暇なくあらゆる責任を一人で背負う場面が少なくありません。特に体力の衰えを感じている場合、年中無休の緊張感は健康上の大きなリスクとなり得ます。

廃業の手続きを完了させれば、資金繰りの悩みや将来への不安といった重圧からも解放され、平穏な生活を取り戻せるでしょう。

債務や経営リスクを整理できる

債務や経営リスクを整理できることも、廃業を選択する利点です。

会社が黒字であっても、将来的に多額の設備投資が必要だったり、不測の事態で債務超過に陥ったりする恐れは常にあります。資産が負債を上回っているうちに清算を行えば、残った現金を経営者の手元に残すことも可能です。

個人保証の問題をクリアにできるため、老後の生活資金を確保しつつ、家族に負の遺産を継がせる心配もなくなります。経営環境が悪化して身動きが取れなくなる前に、自らの意思でリスクを遮断することも賢明な判断です。

関係者への悪影響を最小限に抑えられる

関係者への悪影響を最小限に抑えられるのは、計画的な廃業のメリットです。

倒産のように突然事業が止まってしまうと、従業員の給与未払いや、取引先への支払い不能といった深刻なトラブルを招きます。一方で、事前に時期を決めて進める廃業であれば、各方面に誠意ある対応が可能です。

  • 退職金の支払い
  • 取引先の切り替え期間の確保
  • 在庫や設備の適正な売却

上記を順序立てて進めることで、長年築いた信頼関係を壊さずに事業の幕を閉じられます。周囲への責任を果たした事実は経営者が再起する際の自信にもつながります。

中小企業が廃業を選択するデメリットとリスク

中小企業が廃業を選択するデメリットとリスク

廃業にはメリットがある一方で、長年守ってきたものを失う痛みも伴います。経営者が直面する現実的なデメリットやリスクについても、正しく把握しておきましょう。

従業員の雇用を維持できない

従業員の雇用を維持できないことは、社長にとって最も苦しいデメリットです。廃業は会社を解散させる手続きであり、どれだけ優秀で忠実な社員であっても全員を解雇しなければなりません。

長年苦楽を共にしてきた従業員の生活基盤を奪うことは、経営者の心に大きな傷を残します。再就職支援を個人で行うには限界があり、ベテラン社員ほど次の職場探しに苦労する現実があります。

取引先が自社の廃業に巻き込まれる

取引先が自社の廃業に巻き込まれるリスクも無視できません。

特に、自社がニッチな部品を供給していたり、特定のサービスを一手に引き受けていたりする場合、廃業によって取引先の操業が止まる恐れがあります。代わりの発注先が見つからなければ、取引先の連鎖倒産を招く可能性さえ否定できません。

長年の信頼関係があったからこそ、廃業の通知が相手の経営に与える打撃は深刻です。

事業と技術が途絶える

事業と技術が途絶えることは社会にとっての損失でもあります。

長年の試行錯誤で培った独自のノウハウや職人技、顧客リスト、地域でのブランド力といった無形資産は、一度廃業すれば二度と取り戻せません。しかし本来であれば、日本の産業を支える貴重な財産です。

会社の消滅によってすべての価値が誰にも引き継がれず、文字通りゼロになってしまうことは、地域経済にとっても大きな痛手です。

清算費用がかかる

廃業には多額の清算費用がかかることを忘れてはなりません。会社をたたむためには、登記費用などの事務手数料だけでなく、以下のようなコストが発生します。

  • 在庫や設備の処分費用
  • 店舗や工場の原状回復費用
  • 従業員への退職加算金
  • 専門家へのコンサルティング料

資産を売却しても上記の費用を賄えない場合、経営者が持ち出しで支払うことが必要です。廃業を決めるタイミングが遅れるほど、手元の資金が底をつき、清算すらスムーズにできないリスクが高まります。

経営者が借金を負う可能性がある

経営者が借金を負う可能性がある点は、最大の懸念事項です。

会社の負債に対して経営者が個人保証を行っている場合、廃業時に会社資産で返済しきれなければ、個人の資産から返済する義務が生じます。自宅や貯蓄を失い、最悪の場合は自己破産に至ることにもなりかねません。

会社の清算価値が負債を下回る債務超過での廃業には慎重な判断が不可欠です。次章で解説する廃業以外の選択肢も視野に入れましょう。

【課題別】中小企業が廃業以外にとれる選択肢

【課題別】中小企業が廃業以外にとれる選択肢

廃業しかないと決め込む前に、他の可能性を探ることも大切です。現在の経営課題によっては、廃業を回避し、大切な事業を未来へつなげる道が見つかる可能性はあります。

以下では、経営課題ごとにとれる廃業以外の選択肢を解説します。

【将来性・財務】資金繰りの安定化

事業の継続には資金繰りの安定化が欠かせません。まずは自社のキャッシュフローを正確に把握し、支出の見直しや資産の売却による内部資金の確保を優先しましょう。

一時的な資金不足であれば、金融機関に対して借入金の返済条件を変更(リスケジュール)してもらうことも方法の一つです。また、中小企業向けの公的支援として、信用保証協会の保証制度や、日本政策金融公庫による低利融資の活用も有効です。

同時に、補助金や助成金も活用して設備投資や販路開拓を行い、収益力を高める努力も並行して進めましょう。早期に専門家へ相談し、財務体質の改善を図ることで、廃業を回避できるケースは少なくありません。

【後継者不在】親族への承継

親族への承継は、最も心理的な抵抗が少なく、周囲の理解を得やすい伝統的な手法です。子や配偶者が事業を引き継ぐことで、経営理念や独自の社風を維持しやすいメリットがあります。

しかし、後継者候補に経営の意志があるか、必要な資質を備えているかを慎重に見極めなければなりません。早期にバトンタッチの時期を決め、計画的に教育や株式譲渡を進める必要があります。

贈与税や相続税の負担を軽減できる「事業承継税制」の活用も検討しましょう。早めの準備が、円滑な家族内承継のカギです。

【後継者不在】従業員・役員への承継(親族外承継)

親族に後継者がいない場合、長年自社を支えてきた従業員や役員に引き継ぐ親族外承継も有力な選択肢です。現場の業務に精通しているため、経営の連続性を保ちやすく、顧客や取引先からの信頼を維持しやすい点が強みです。

一方で、候補者が株式を買い取るための資金確保が大きな課題となります。また、経営者個人が負っている金融機関への連帯保証をどう解除するかも調整が必要です。

数々のハードルを越えるために、金融機関や専門家と協力し、数年単位の長期的な計画を立てて進める必要があります。

従業員承継のデメリット10選|後継者も会社も守るための課題と解決策

【後継者不在・将来性】第三者承継(M&A)

第三者承継(M&A)は、他社に事業を譲渡することで後継者問題を解決し、さらなる成長を目指せる手法です。かつては身売りといったネガティブなイメージもありましたが、現在は中小企業の有効な出口戦略として一般的な手法になりました。

自社単独では難しい販路の拡大や、譲受企業の資金力・ノウハウを活用した事業強化が期待できます。経営者は譲渡対価として現金を手にできるため、ハッピーリタイア後の生活資金や、新事業の元手として活用可能です。

また、従業員の雇用や取引先との関係をそのまま維持できるケースが多く、廃業による損失を最小限に抑えられます。専門の仲介会社へ相談し、自社の価値を正しく評価してくれるパートナーを探すことが成功の第一歩です。

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中小企業の経営者が廃業を検討する際に相談すべき専門機関

中小企業の経営者が廃業を検討する際に相談すべき専門機関

廃業や事業承継といった重大な決断は、一人で抱え込まずに専門家へ相談することが非常に重要です。
客観的なアドバイスを得ることで、より良い選択肢が見つかったり、手続きをスムーズに進められたりします。

相談先 特徴・相談できる内容
商工会・商工会議所 地域密着型の経営相談窓口。経営全般の相談が可能。
よろず支援拠点 国が設置する無料の経営相談所。幅広い分野の専門家が在籍。
金融機関 取引のある銀行や信用金庫。資金繰りの相談やM&Aのマッチング支援も。
税理士・コンサルタント 顧問税理士など。会社の財務状況を最もよく理解しており、税務面で頼りになる。
事業承継・引継ぎ支援センター 国が設置する事業承継の公的相談窓口。後継者探しやM&Aを支援。
M&A 仲介会社 M&A の専門家。譲受企業の探索から契約締結までを一貫してサポート。

事業承継の相談相手は誰が良い?専門家の選び方と注意点も解説

商工会・商工会議所

商工会議所は、地域の経営者が集まる最も身近な相談窓口です。経営改善の助言から、資金繰り、税務、法律問題まで幅広く対応しており、専門家による無料相談会も定期的に開催しているところもあります。

地域に根ざしたネットワークがあるため、地元の状況に合わせた適切な助言が得られる点が大きな魅力です。

都道府県等中小企業支援センター

中小企業支援センターは、各都道府県に設置された公的な支援機関です。経営、技術、情報化など、中小企業が抱える多様な課題に対する専門的なアドバイスを行っています。廃業や事業継続の悩みについても、中立的な立場から相談に乗ってくれます。

他の支援機関や専門家との橋渡し役も担っているため、最初の一歩として活用しやすい窓口です。

よろず支援拠点

よろず支援拠点は、国が設置した無料の経営相談窓口です。売上拡大や経営改善など、あらゆる悩みに専門家がチームで対応してくれます。廃業を迷っている段階でも、現状を整理し、継続の可能性や最適な出口戦略を一緒に探ってくれる心強い味方となってくれます。

相談回数に制限がなく、何度でも無料で利用できるのが大きな特徴です。

金融機関

普段から取引のある銀行や信用金庫も、重要な相談先の一つです。資金繰りの相談はもちろん、事業承継やM&Aに関する専門部署を設けている機関も多くあります。自社の財務状況を把握しているため、具体的な数字に基づいた現実的なアドバイスが期待できます。

ただし、返済状況によっては踏み込んだ相談がしにくい場合もあるため、信頼関係を軸に検討しましょう。

税理士・コンサルタント

顧問税理士は、自社の経営数字を最も詳しく知るパートナーです。廃業時の清算業務や、承継時の税金対策など、実務面で欠かせない助言をくれます。

また、経営コンサルタントは、事業の将来性を客観的に分析し、再生の道があるか判断する手助けをしてくれます。守秘義務が徹底されているため、外部に知られたくないデリケートな悩みも安心して相談できる相手です。

事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターは、国が運営する事業承継に特化した専門機関です。

後継者不在に悩む経営者に対し、親族内承継の支援や、後継者バンクを通じたマッチングなどを行っていますが、中立公正な立場から、廃業を回避するための具体的な道筋を提案してくれることもあります。

M&Aの検討段階でも、公的な立場からアドバイスをくれるため、安心して利用できます。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、会社を売りたい経営者と買いたい企業をつなぐ専門家です。企業価値の算定から、最適な譲受企業の選定、交渉の調整、契約締結までを一貫してサポートしてくれます。

廃業しか選択肢がないと思っている場合でも、仲介会社に相談することで自社の意外な価値が見つかり、譲渡が実現するケースは多々あります。早期の相談で、より好条件での承継を目指せます。

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中小企業がM&Aによる第三者承継で廃業を回避した事例

中小企業がM&Aによる第三者承継で廃業を回避した事例

後継者不在や業績の悩みから一時は廃業を検討したものの、M&Aによって事業を存続させた中小企業も少なくありません。実際にどのようなプロセスで成約に至り、どのような効果が生まれたのか、具体的な4つのケースを見ていきましょう。

中小企業M&Aとは?|動向や価格の決め方・事例をわかりやすく解説

建設業⇒他エリア同業者への事業譲渡

防熱工事業を展開する企業が、後継者不在の課題をM&Aで解決した事例です。譲渡企業は高い専門性を持ちながらも、次代を担うリーダーがいない状況でした。

取引先のために廃業を回避したかった同社は、M&A仲介会社に支援を依頼し、防熱工事業を一部手掛ける同業者(他エリア)への事業譲渡を実現しています。両社の明確な事業シナジーと譲渡企業代表者の人柄が成約の決め手となりました。

同M&Aにより、譲渡企業の優れた技術がさらなる成長の機会を獲得し、取引先との関係も継続しています。譲受企業は防熱工事の内製化と新拠点の確保を同時に実現しました。

ホテル⇒同業大手への株式譲渡

後継者不在に加え、3期連続で経常損失の厳しい経営状況にあったホテルの事例です。自力での再建は難しいと判断した経営者は、M&A仲介会社の紹介で全国展開する同業大手への株式譲渡を決断しました。

譲受企業が注目したのは、譲渡企業が長年築いた知名度やサービスの質、教育された優秀な人材でした。赤字経営であっても、磨き上げられたソフト面に高い価値が見出されたのです。

同M&Aにより譲渡企業の従業員は活躍の場が広がり、経営者は十分な譲渡対価を得て悠々自適の引退生活を実現しています。

計測機器製造業⇒計測機器の施工・メンテナンス業への事業譲渡

独自の計測機器を製造する企業が、地元信用金庫への相談をきっかけにM&Aを実現した事例です。

経営者は当初、財務状況や事業規模からM&Aは困難と予想し廃業を検討していました。しかし実際に譲受企業を募集したところ、4社もの譲渡先候補が名乗りを上げたのです。最終的に、同分野の施工やメンテナンスを手掛ける企業への事業譲渡が成立しました。

成約の決め手は譲渡企業が持つ高い技術力と商圏です。M&A後も譲渡企業の代表者は顧問として残り、取引先との関係をより強固にしています。優れた技術を持つ従業員の継続雇用も実現しました。

メッキ加工業⇒他エリア溶接加工業への事業譲渡

熟練職人を抱えるメッキ加工業の経営者が、自身の高齢化と後継者不在を理由に事業譲渡を決断した事例です。譲渡企業の経営者は従業員の雇用継続を最優先条件に掲げ、譲渡額の譲歩も辞さないスタンスで交渉の席に着きました。

最終的には他エリアで溶接加工を営む企業とのマッチングが成立し、譲受企業からは全従業員の雇用継続が約束されました。成約の決め手は両事業の相乗効果と譲渡額の譲歩です。

統合をきっかけに譲受企業では働き方改革が実施され、残業の削減や待遇改善といったポジティブな変化が生まれています。高い技術力を持つ職人集団が、より安定した経営基盤の下で技術を磨く環境が整った好事例です。

後継者問題の解決策はM&Aにある?中小企業が知っておくべき現状と対策

中小企業がM&Aで事業承継を実現するポイント

中小企業がM&Aで事業承継を実現するポイント

中小企業がM&Aを成功させ、理想的な形で事業を引き継ぐためには、自社の魅力を客観的に整える準備が必要です。特に以下の3点は、スムーズな成約に欠かせない要素です。

  • 有形・無形資産(企業価値)を洗い出す
    自社の強みは何かを客観的に分析します。不動産や機械設備といった有形資産だけでなく、技術力、顧客リスト、ブランドイメージ、従業員のスキルといった無形資産も譲受企業にとっては大きな魅力です。
  • 事業の需要を把握する
    自社の事業や技術が、どのような企業にとって魅力的かを考えます。同業他社だけでなく、新規事業を探している異業種の企業も有力な候補となり得ます。
  • 早期にM&A専門家に相談する
    M&Aは準備から成立まで1年以上かかることも珍しくありません。経営者が元気で、会社の業績が良いタイミングで相談を始めることが、より良い条件でのマッチングにつながります。

廃業理由の多くはM&Aによる第三者承継で解決可能

廃業理由の多くはM&Aによる第三者承継で解決可能

後継者不在や将来への不安から廃業を検討している場合でも、M&Aによる事業承継で道が開ける可能性は十分にあります。廃業はすべてを失う決断ですが、M&Aなら従業員の雇用を守り、創業者利益を得てハッピーリタイアを実現することも可能です。

長年築き上げた技術や信頼を次世代へつなぐことは、社会にとっても大きな価値があります。まずは一度専門家へ相談し、自社が持つ真の価値を再発見することから始めてみましょう。

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澤口 良太
監修者

社外取締役(財務)・公認会計士・税理士 澤口 良太

北海道札幌市出身。2003年の学校卒業後、税理士事務所で勤務しながら税理士・公認会計士の資格を取得。KPMGあずさ監査法人を経て、TOMAコンサルタンツや辻・本郷ビジネスコンサルティングでファイナンシャルアドバイザリーサービス(FAS)の責任者を歴任。2020年、独立。澤口公認会計士事務所にて経営やM&Aアドバイザリーを展開している。上場・非上場を問わず企業のオーガニックソースやM&Aによる成長戦略、再生戦略の立案実行をハンズオンにて支援し、多数の実績を有する。2022年のM&Aフォース設立当初から、社外取締役として参画している。

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