M&A実務

事業譲渡の手続きと実務フロー|スケジュール・必要書類・注意点を解説


事業の一部または全部を他社へ引き継ぐ「事業譲渡」。会社そのものを売買する株式譲渡とは異なり、譲渡する対象の「資産」「負債」「雇用契約」「取引先との契約」などを個別で指定・引き継ぐ点が大きな特徴です。

しかし、個別で引き継ぐからこそ、会社法上の手続きや契約の巻き直し、労働法への配慮など、実務上で押さえるべきステップが多岐にわたります。本記事では、事業譲渡を進める際の手続きの流れ、必要となる法的手続き、注意すべきコンプライアンス上のポイントをわかりやすく解説します。

1. 事業譲渡手続きの全体スケジュール

事業譲渡の検討から実際の引き継ぎ(クロージング)完了までは、一般的に3ヶ月〜6ヶ月程度の期間を要します。全体の主な流れは以下の通りです。

  1. 準備・検討フェーズ: 譲渡対象となる事業(資産・人材・契約など)の整理
  2. 交渉・基本合意フェーズ: 買収側企業との交渉・基本合意書の締結
  3. デューデリジェンス(買収監査): 事業の法務・財務リスク等の詳細確認
  4. 事業譲渡契約の締結: 譲渡条件や引き継ぎ範囲の最終確定
  5. 会社法上の手続き: 株主総会の特別決議や反対株主への通知等
  6. 個別資産・契約の移転(クロージング): 従業員の転籍同意、取引先の同意、許認可の再取得等
  7. 効力発生・PMI(統合プロセス): 実際の事業移転と引き継ぎ後の運用

特に会社法上の手続きや個別契約の整理には一定の期間を要するため、余裕を持ったスケジュール設計が重要となります。

2. 【実務・コンプライアンス】個別移転手続きのポイント

事業譲渡は、権利義務が一括で承継される株式譲渡や会社分割とは異なり、個別の契約を一つひとつ買い手企業へ移転する手続き(個別承継)が必要です。ここでのトラブルを防ぐためのコンプライアンス上の注意点をまとめました。

① 取引先・関係先との契約の巻き直し(第三者の同意)

譲渡対象の事業で使用している売買契約、賃貸借契約、業務委託契約などは、自動的に買い手企業に引き継がれるわけではありません。原則として取引先(第三者)から「契約移転の同意」を得る必要があります。新たに買い手企業と取引先との間で「三者間契約」を締結するか、既存契約の解除と新規契約の締結を行うのが一般的です。

② 従業員の転籍手続き(労働者の個別同意)

事業に従事している従業員を買い手企業に移籍(転籍)させる場合、従業員一人ひとりの明示的な「同意」が必要です。勤務条件(給与・労働時間・福利厚生等)の変更内容を丁寧に説明し、同意書を取り交わします。労働法上のトラブルを避けるためにも、強要にならず、十分な説明と合意形成の時間を確保することが強く求められます。

③ 許認可の新規取得・変更届出

行政からの許認可(飲食店の営業許可、建設業許可、宅建業許可など)を要する事業の場合、原則として買い手企業側で改めて許認可を取得し直す必要があります。許認可の種類によっては、審査に数ヶ月かかる場合もあります。効力発生日にスムーズに営業開始できるよう、関係官庁へ事前の相談・申請準備を進めることが不可欠です。

3. 事業譲渡手続きを円滑に進めるためのポイント

  • 契約関係・権利関係の事前の棚卸し:
    手続きの遅延を防ぐためには、早期から「事業譲渡の対象に含まれる契約や資産」を可視化・整理しておくことが効果的です。特に主要な取引先との契約条項に「事業譲渡時の取り決め(チェンジ・オブ・コントロール条項等)」がないか確認しておきましょう。
  • 競業避止義務の確認:
    会社法(第21条)では、原則として事業譲渡を行った売り手企業は、同一または隣接する市区町村内で一定期間(原則20年間)、同種の事業を行ってはならない(競業避止義務)と定められています。当事者間の合意によってこの期間を短縮・除外・延長することも可能なため、譲渡後の自社の事業展開を踏まえて事前に条件をすり合わせておくことが重要です。

4. まとめ

事業譲渡の手続きは、会社法上の株主総会決議だけでなく、取引先との契約調整や従業員の個別同意、許認可の手続きなど、個別実務が多岐にわたります。スケジュールや契約関係の確認を怠ると、事業の引き継ぎ遅延やトラブルに発展するリスクもあります。自社の事業規模や譲渡対象の性質に応じ、法務・税務の専門家やM&Aコンサルタントのアドバイスを受けながら、適切なプロセスで進めることを推奨いたします。

株式会社M&Aフォースへご相談ください

M&Aフォースでは業界に精通した専門チームが、貴社の強みを最大限に引き出すM&A戦略をご提案します。 M&Aに関して、少しでもご興味やご不安がございましたら、まずはお気軽に当社の無料相談をご利用ください。 専門のコンサルタントが、お客様の未来を共に創造するパートナーとして、親身にサポートさせていただきます。

      『M&A無料相談』を利用してみる      

M&Aに役立つ資料も無料公開中

M&AフォースではM&Aコンサルティングの最新事情がわかる資料をご用意しています。会社の価値がわからない、会社の価値がどう決まるのか知りたいという方は「“売れる”会社のヒントにつながる9つの質問」をダウンロードしてください。

 

澤口 良太
監修者

社外取締役(財務)・公認会計士・税理士 澤口 良太

北海道札幌市出身。2003年の学校卒業後、税理士事務所で勤務しながら税理士・公認会計士の資格を取得。KPMGあずさ監査法人を経て、TOMAコンサルタンツや辻・本郷ビジネスコンサルティングでファイナンシャルアドバイザリーサービス(FAS)の責任者を歴任。2020年、独立。澤口公認会計士事務所にて経営やM&Aアドバイザリーを展開している。上場・非上場を問わず企業のオーガニックソースやM&Aによる成長戦略、再生戦略の立案実行をハンズオンにて支援し、多数の実績を有する。2022年のM&Aフォース設立当初から、社外取締役として参画している。

Contact

お電話でのお問い合わせ

03-6206-8241

営業時間:9:00-17:30

最短30秒で無料相談